I-P-114
内胸動脈(ITA)由来の体肺側副動脈(APCA)に対するフォンタン手術時ITA結紮術
兵庫県立こども病院循環器科1),心臓血管外科2)
田中敏克1),齋木宏文1),富永健太1),藤田秀樹1),城戸佐知子1),大嶋義博2)

【背景】フォンタン手術において,術後の血行動態を良好に保つため,術前に有意なAPCAに対しコイル塞栓術を行うのが一般的である.しかし,ITA由来のAPCAに対し,ITA近位部を塞栓するだけでは手術までの数日の間にネットワークを形成した肋間動脈や下横隔動脈などからの血流が増加し,効果が減弱する可能性がある.そのため,当院ではITAの近位から遠位にわたってコイル塞栓する方針としてきたが,高額な費用・放射線被曝・発熱やCRP上昇による手術の延期,などの問題点があった.【目的】ITA由来のAPCAに対するフォンタン手術時ITA結紮術の効果を評価すること.【対象と方法】術前カテでITA由来の多数のAPCAを認め,フォンタン手術中にITA結紮を施行した 5 例のうち,術後 1 カ月時および 1 年時のフォローアップカテを施行した 4 症例を対象とし,造影所見を検討した.【結果】初期の 1 例では,術後 1 カ月時の造影で結紮部位より近位からのAPCAを認めたためコイル塞栓術を追加した.後期の 3 例のうち 1 例は術前の造影で近位部からの枝を認めたため,前症例の教訓からそれをコイル塞栓した後にITAを結紮し,術後 1 カ月時の造影でAPCAはみられなかった.他の 2 例ではできるだけ近位での結紮を行い,術後コイル塞栓を要しなかった.術後 1 年時の造影では,4 例とも新たなAPCAのネットワークの増生はみられなかった.また,ITA結紮に起因すると思われる合併症もなかった.【結語】ITA由来のAPCAに対するフォンタン手術時ITA結紮術は,使用コイル数を減らすことにより,費用対効果・発熱による手術延期を避ける・被曝軽減などの点で有用である.近位からの枝を認めた場合は術前にコイル塞栓すること,結紮はなるべく近位で行うことでより効果を高めることができると考える.懸念された新たなAPCAの増生は,少なくとも術後 1 年ではみられなかったが,今後中長期的なフォローアップが必要である.

閉じる