I-P-115
左心低形成症候群に対するbilateral PAB strategyにおける術式の工夫
三重大学大学院医学系研究科胸部心臓血管外科学1),小児科学2)
高林 新1),梶本政樹1),横山和人1),大橋啓之2),三谷義英2),新保秀人1)

【目的】当科では左心低形成症候群(HLHS)に対し第一期両側肺動脈絞扼術(bil. PAB)と第二期ノーウッド・グレン手術(Norwood + BDG) を行い5/9例(56%)生存,4 例Fontan手術到達の成績を得た.当科で行っている術式の工夫を報告する.【対象と方法】対象は2002年以降の第一期bil. PAB(7~19d,2.6~3.5kg)を行ったHLHS 9 例(AA/MA:6,AS/MS:2)で,2 例が染色体異常を,1 例がASD閉鎖を伴っていた.第一期術後の体血流維持はPGE1持続投与を第一選択とした.第二期Norwood + BDGを 8 例,Fontan手術(fenestrated TCPC,2y4m~4y4m,10~14kg)を 4 例に施行した.第一期手術:ePTFE 0.4mm厚 2mm幅テープにて片側周径8.5~14mmで絞扼した.現在の方針は2.5kg:9~10mm,3.0kg:10~11mm,3.5kg:11~12mmを目安としている.第二期手術:3~9m(2.9~5.2kg)で8/9例(89%)が到達した.腕頭動脈と下行大動脈送血下にPDA切除,大動脈弓部と下行大動脈の連続性確保を施行, PA断端は左右PAに対し垂直に直接閉鎖し,5m以下では絞扼解除のみで形成は不要であった.将来大動脈縮窄が懸念される弓部の補填をグルタールアルデヒド処理自己心膜で 2 例に対し行った.心停止下にASD拡大,冠血流再建,大動脈弓再建した.体重が 4kg以上のNorwood + BDGでは肺動脈壁が新生児期Norwoodより厚く冠血流再建の際に注意を要する.BDGを施行し手術を終了した.【結果】術後肺動脈変形なく,左右均等な発育(PAI:93~171,右/左PA径:0.95~1.15)が得られた.大動脈弓再建の際にグルタールアルデヒド処理自己心膜を用いた 2 例で大動脈再縮窄や瘤化は認めなかった.死亡例は染色体異常,心外多発奇形,低心機能のいずれかを伴っていた.【結語】本戦略においても術式の工夫によりFontan循環に適合し得る肺動脈,大動脈弓形態が得られた.本戦略はHLHSに対する治療戦略の一選択肢になり得る.

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