I-P-116
中心肺動脈狭窄あるいは低形成合併単心室症に対する新生児期・乳児期早期の人工心肺下体肺動脈シャントの効果
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓外科
岩崎美佳,鈴木孝明,枡岡 歩,加藤木利行

【背景】Fontan型手術を最終目標とする単心室症において,肺血管の十分な発育と低い肺血管抵抗を得ることは重要であるが,動脈管組織による肺動脈狭窄や肺動脈の低形成のためにFontan手術に到達できない症例も存在する.【目的】中心肺動脈狭窄あるいは低形成合併単心室症に対して新生児期・乳児期早期に人工心肺を使用し体肺動脈シャント(S-P shunt)を施行した症例における手術成績と予後・カテーテルインターベンションの必要性について検討した.【対象】2000年 1 月~2009年 1 月の期間に,人工心肺使用下にS-P shuntを施行した症例は20例(P群)であり,肺動脈形成を同時に施行した症例は 8 例であった.対照は同時期に人工心肺を用いずにBT shuntを施行した単心室症15例(B群)とした.【結果】初回手術時体重・手術時日齢においては両群間に有意差は認めなかった.初回手術時のPA indexはP群では91 ± 29.5,B群では140 ± 34.6であり,P群において有意に低値であった.経過中に肺動脈狭窄を認め,カテーテルによるバルーン拡張術施行はP群では20例中16例(80%),B群では15例中 6 例(40%)であり,P群において有意に多かった.手術成績はP群ではFontan型手術到達 8 例(40%),同待機 7 例(35%),Glenn手術待機 2 例(10%),手術死亡 1 例(5%),遠隔期死亡 2 例(10%).B群では,Fontan型手術到達 6 例(40%)・同待機 2 例(13.3%),Glenn手術待機 2 例(13.3%),手術死亡 1 例(6.7%),遠隔期死亡 4 例(26.7%)であった.人工心肺を用いたS-P shuntでは,術後,再狭窄率・カテーテル介入率が高い傾向にあったが,Fontan手術への到達率は変わらなかった.【考察】左右肺動脈間の連続性がない症例や肺動脈径が小さい症例では,初回手術時に人工心肺を使用せざるを得ない場合が多く,術後高率に肺動脈の再狭窄を合併するが,カテーテルインターベンションや再手術によりFontan型手術の到達率を向上させることができた.

閉じる