I-P-117
小児に対する補助循環の実際
神奈川県立こども医療センター心臓血管外科
武田裕子,麻生俊英,小坂由道,梶原敬義,大中臣康子

【目的】当院における補助循環使用の成績を検討した.【対象と方法】過去約 5 年間で補助循環が適用された小児例29例を対象とした.心臓外科術後症例22例,内科疾患症例 7 例.年齢は日齢 3~29歳(中央値4.8カ月),新生児は 8 例.体重は2.1~52kg,中央値4.6kg.回路は遠心ポンプを用い,総充填量は350ml.アプローチは体重20kg以下では開胸し上行大動脈送血とし,それ以上では経皮的に大腿動静脈から行った.症例を以下の 3 群に分けた.術後症例のうち,術中および術後24時間以内に装着した症例をA群,術後24時間以降に心肺蘇生に用いた症例をB群.内科疾患症例をC群とした.【結果】A群は19例で,離脱率は68%,生存率は47%だった.単心室症例が 7 例中 6 例死亡し,A群での死亡例の67%だった.生存率は単心室症例で14%だったが,二心室症例では75%と良好だった.単心室症例の生存は 1 例のみで,これは生後 2 カ月,4kgの無脾症,肺動脈閉鎖で,BTシャント術後 6 時間でショックとなりLVADを導入した.生後 2 カ月であったが心負荷軽減効果を期待しLVAD下に両側BCPSを行い救命した.新生児例は 3 例が離脱,生存した.B群 3 例は,全例離脱し退院した.急変時から導入までは 1 時間以内だった.C群は 7 例で 6 例が劇症型心筋炎,1 例がDCMの急性増悪でうち 5 例を救命した.CPRを施行しながら来院し,補助循環を導入した 2 例は救命できなかった.【結語】(1)二心室修復術後の補助循環の成績は良く,新生児でも救命可能だった.(2)院内発症した心肺蘇生例に対する補助循環の離脱率は良好で,迅速な判断と補助循環の確立が重要である.(3)内科疾患では導入する時期が救命率を左右した.(4)単心室群の成績は不良であった.救命し得た 1 例は単心室症の治療戦略を再考させられた.

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