I-P-118
低充填量補助循環導入症例の検討
北里大学医学部心臓血管外科1),群馬県立小児医療センター心臓血管外科2)
友保貴博1),宮地 鑑1),入澤友輔1),田中佑貴1),板谷慶一1),井上信幸1),柴田 講1),須藤恭一1),鳥井晋三1),小原邦義1),宮本隆司2)

【目的】当院では無輸血・低侵襲開心術を目指して,人工心肺回路の低充填量化をすすめてきた.補助循環(CPS)に対しても,2003年9月より低充填量・小型化した回路(最小充填量150ml)を導入した.今回,その使用経験と有効性について検討した.【対象と方法】2003年 9 月~2008年 9 月の 5 年間に当院でCPSを導入した 9 例を対象とした.ECMO症例は除外した.男女比は4:5.平均年齢8.3カ月(日齢10日~3 歳).平均体重4.9kg(2.1~8.8kg).9 例の内訳は術後人工心肺より離脱できなかった症例が 3 例(完全大血管転位(II型),大動脈縮窄複合根治術,グレン手術),PICUまたは心カテーテル室での急変に対して緊急に導入した例が 3 例(右肺動脈ステント留置後,VSD術後肺高血圧発作,Taussig-Bing奇形術後肺高血圧発作),待期的CPS導入した例が 3 例(急性心筋炎,術後心筋梗塞,Norwood術後)であった.【結果】CPS導入に要した時間は緊急症例では平均58分(45~80分),待期的導入例では平均27分(13~40分)であった.CPS離脱可能であったのは 5 例(56%)(待期的導入例が 3 例,人工心肺離脱不能例が 2 例)で,緊急導入症例は 3 例全例離脱できなかった.CPS離脱に要した期間は平均7.2日(3~14日)であった.CPS離脱症例 5 例中,生存例は 1 例(20%)で,4 例がCPS離脱後,呼吸不全:2 例,肝不全:1 例,循環不全:1 例で死亡した.【結語】当院でのCPS導入症例の生存率は11%(9 例中 1 例)であった.待期的CPS導入症例では,CPS導入に要した時間が平均27分と短く,全例CPS離脱可能であった.待期的に導入した 1 例が現在,生存しており,CPS導入時間も13分と最も短かった.開心術後の肺高血圧発作などの急変時に対応したCPS早期導入システムを確立し,CPS導入に要する時間を短縮することで,離脱症例は増加することが期待されるが,最終的な予後改善にはCPS導入に対する適応を含めてさらなる検討が必要であろう.

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