I-P-119
小児先天性心疾患術後の補助循環
弘前大学医学部胸部心臓血管外科
山内早苗,鈴木保之,大徳和之,福井康三,福田幾夫

小児心臓手術後補助循環は導入時期やアクセス方法,抗凝固などが問題となる.本院で経験した小児心臓手術後補助循環症例について検討した.【対象】2002年 4 月~2008年12月に行った小児先天性心疾患手術337例中,術後補助循環を行った 8 例(月齢27 ± 35,体重8.5 ± 7.1kg).診断はSV 3,AVSD術後僧帽弁閉鎖不全 1,肺動脈閉鎖症 1,共通房室弁逆流 1,肺動脈閉鎖 + MAPCAs 1,HLHS 1.手術は根治術 3(TCPCを含む),姑息術 5(BT shunt 1,Glenn 1,弁形成 1,肺動脈集合化術 1,Norwood + BT shunt 1)行い,術後心不全 4,低酸素 4 のために補助循環を行った.このうち術中人工心肺から離脱できず補助循環に移行 5 例,離脱後状態が悪化して補助を開始 3 例であった.補助循環装置はメラ人工心肺装置,成人用PCPSを使用し,補助方法は静脈脱血動脈送血(VA)による心肺補助 4,静脈脱血静脈送血(VV)による酸素化補助(ECMO) 2,VAによるECMO 2であった,脱血部位は右房 5,上大静脈 1,左内頸静脈 2,送血部位は上行大動脈 5,大腿静脈 1,右房 1,下行大動脈 1で補助流量は80~100ml/kg/min,補助時間は平均106時間(19~260)であった.抗凝固療法はヘパリン,nafamostatを使用しACT 150~300秒で管理した.【結果】8 例中補助循環を離脱したのは 7 例でそのうち 1 例が離脱後12時間呼吸不全から再度心不全となり失ったがその他は全例退院した.補助循環中に追加手術を必要としたのはVV-ECMOの 2 例(対側のshunt術,Glennのtake down + 体肺動脈shunt).VA心肺補助 1 例(TCPC後,肝静脈のtake down)VA-ECMOの 1 例(BT shuntのsize up)であった.補助中の合併症は出血が多く複数回の再開胸止血術を要した.中枢神経系合併症は 2 例に認めたが補助中に生じたものかは不明であった.補助中,創を完全に閉鎖できたのは 1 例であったが縦隔炎の発症はなかった.【考察】8 例中 6 例で救命でき補助循環の有用性が示された.合併症は出血が多くACTの調整は検討を要する.小児では低酸素から心不全となるのが特徴で,心形態からVV-ECMOも有用と考えられた.

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