I-P-120
小児心臓手術周術期における補助循環導入の意義
東京慈恵会医科大学附属病院心臓外科
村松宏一,森田紀代造,宇野吉雅,山城理仁,篠原 玄,橋本和弘

【目的】小児心臓手術の成績向上は術式や麻酔法の改善や,人工心肺,心筋保護の発達といった術中要因の改良に加えて,薬物治療やガス吸入療法などの周術期管理の改良によるところも大きい.当院では,循環,呼吸動態の安定を目標に術前も含む周術期に積極的に補助循環を導入している.最近 3 年間の補助循環導入症例から当院における補助循環導入の適応と意義について考察する.【対象と方法】対象は2006年 1 月から現在までの 3 年間で当院で周術期に補助循環を導入した 7 例.術前状態,導入とタイミングと導入の理由,導入後の経過,離脱の可否,生存退院の有無を検討した.【結果】平均年齢8.7カ月(6 日~3 歳 5 カ月),男女比 5:2,術前導入 1 例,術後導入 6 例.導入理由は気道出血 4 例,低酸素 2 例,LOS 3 例,心停止 1 例であった(重複あり).離脱例は 5 例(71.4%),離脱後 1 カ月以上の生存例は 3 例(42.9%)であった.【結論】補助循環の導入は内科的治療では制御不能な肺高血圧に伴う肺出血のコントロールや,手術に伴う高度の低心拍出症例の心機能回復までまたは手術介入までのbridgeとして有用であると考えられ,術前,術後いずれのタイミングでも有用であると考えられた.特にPHに伴う高度の肺出血のコントロールや,手術侵襲に起因する低心機能,酸素化不良に対する補助としての意義は大きく,時機を逸せず導入する必要がある.一方,SIRDSに起因する循環不全や,主要臓器そのものの異常に起因する障害が併発した場合の離脱は困難で,適応の慎重な検討と,導入に際しては十分な合併症対策が必要である.

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