I-P-121
先天性心疾患再手術時の心外アプローチによる体外循環使用例の検討
社会保険中京病院心臓血管外科1),小児循環器科2)
野中利通1),野田 怜1),波多野友紀1),杉浦純也1),加藤紀之1),櫻井 一1),吉田修一朗2),久保田勤也2),西川 浩2),大橋直樹2),松島正氣2)

【目的】先天性心疾患手術は複雑心奇形に対してはstaged operationが行われ,また心内修復術の遠隔期には遺残症や続発症に対する再手術が増えている.Staged operationの待機中に病態悪化を来した場合,再手術の開創時出血を来した場合,心嚢内癒着でカニュレーション不可能な場合など,心外アプローチによるCPBの使用目的はさまざまである.今回の目的は再手術を安全に行うための体外循環使用例の検討である.【方法】2004~2008年の 5 年間の先天性体外循環手術521例中の再手術症例のうち内頸/大腿アプローチによるCPB使用例について原疾患・カニュレーション部位/サイズ・合併症について検討した.【結果】術前CTを検討し手術開始時に内頸/大腿のpreparationを施行した31例中,実際に心外からのCPBを使用したのは 9 例(29%)であった. 9 例の原疾患はcTGA 4 例,SV 2 例,DORV 1 例,cAVSD 1 例,TAPVC 1 例でアプローチは内頸 3 例/大腿 6 例であった.内頸アプローチの3 例は年齢 3 カ月~4 歳,体重は2.8~6.7kg,カニューレは送血 8~12Fr/脱血10~12Frで,開始理由はショック 2 例,予定使用 1 例,術後合併症は低酸素脳症 2 例であった.大腿アプローチの 6 例は年齢13~37歳,体重は42~53kg,カニューレは送血14~20Fr/脱血18~32Frで,開始理由は開創時出血 3 例,予定使用 1 例,心嚢内高度癒着 2 例で術後合併症は大腿神経障害 1 例,下肢虚血 1 例であった.【考察・結論】大腿動静脈の経皮的穿刺が可能なカニューレは送血15Fr/脱血17Frが既製品では最小で25kg以上の小児で可能であると考えられ,乳児以下では内頸アプローチが第一選択となる.内頸アプローチはカットダウンが必要でハイリスク症例では最初に血管露出を施行することが低酸素脳症などの重篤な合併症の予防には重要である.大腿アプローチは全例でライン確保して手術開始しているため導入が早く重篤な合併症は認めなかったが,末梢血流障害を来すことがあり早期抜去など対策が必要である.

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