I-P-82
川崎病における血管床生理学的特性の変化の多様性
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科
関  満,先崎秀明,岩本洋一,小林俊樹,石戸博隆,葭葉茂樹,竹田津未生,増谷 聡

【背景】われわれはこれまで,川崎病遠隔期においては,冠動脈のみならず,形態上は正常な肺体種々の血管床に,種々の程度の質的変化があることを示してきた.今回,川崎病血管炎の病態生理をさらに明らかにすべく,これら異なった血管床の質的変化の相互関係について検討した.【方法】急性期に,冠動脈が 4mm以上の拡大を呈した川崎病患者31例(7.2 ± 4.1歳)において,心臓カテーテル検査時(発症時より4.1 ± 4.2年経過)に主肺動脈,大動脈の圧と血流速を同時計測し,肺動,大動脈input impedanceを算出し動脈血行動態を評価した.【結果】冠動脈病変残存症例(17例)および冠動脈病変消失症例(14例)のいずれにおいても,大動脈末梢部の血管壁硬度,反射,近位部壁硬度が正常対照群としての小短絡(計算上のQp/Qs = 1.0)心室中隔欠損38例(6.7 ± 4.6歳)に比し有意に増加していたが,肺血管床では,病変残存群においてのみ末梢壁硬度のみが有意に増加していた.大動脈壁の質的変化,肺動脈壁の質的変化の程度は,病変残存群において,大動脈末梢壁と肺動脈末梢壁硬度に弱い正の相関を認めた以外には一定の傾向を示さなかった.【考察】今回の結果は,川崎病における血管床の質的変化は,冠動脈,体血管,肺血管で一様ではなく,血管炎症の広がりが不均一かつ不定であることを示唆する.したがって,冠動脈病変の有無にかかわらず,今後の経過観察が必要であると思われた.

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