I-P-83
川崎病における血清サイトカイン,ケモカインの変化
日本医科大学小児科
上砂光裕,勝部康弘,阿部正徳,深澤隆治,小川俊一

【背景・目的】全身の血管炎である川崎病において各種サイトカインの変動など,炎症惹起物質の研究は数多くなされているが,疾患の発症機序の解明は十分とはいえない.種々のサイトカインは生物学的に重複した作用を有しており,相互に作用しあう.したがって,一群のサイトカインをまとめて解析することは,一種類のサイトカインの解析に比べて多くの場合重要な意味を持つ.今回,サスペンションビーズアレイテクノロジーを用いたBio-Plexシステムによるサイトカインアッセイ法によって,川崎病における血清サイトカインを多種類,同時に測定し,解析した.【対象・方法】対象は川崎病罹患児12例(男児 7 例,女児 5 例),平均 1 歳10カ月.γグロブリン(γG)投与量は 2g/kgで開始したが,冠動脈拡張を認めた 1 例を含めて, 3 例が不応例であり,γG再投与,あるいはステロイド剤を追加した.採血は急性期:γG投与前,遠隔期:発症 3 カ月後に行った.得られた血清は-80°Cの凍結保存後,サスペンションビーズアレイテクノロジーを用いたBio-Plexサイトカインアッセイ法を用いて,血清サイトカイン,ケモカイン48種(IL-1β, IL-1Ra,IL-2,IL-4, IL-5, IL- 6,IL-7, IL-8, IL-9, IL-10, IL-12, IL-13, IL-15, IL-17, Basic FGF, Eotaxin, G-CSF, GM-CSF, IFN-γ, IP-10, MCP-1, MIP-1α, MIP-1β, PDGF-BB, RANTES, TNF-α, VEGF, IL-1α, IL-2Ra, IL-3, IL-12, IL-16, IL-18, CTACK, GRO-α, HGF, IFN-α2, LIF, MCP3, M-CSF, MIF,MIG,β-NGF, SCF, SCGF-β, SDF1a,TNF-β, TRAIL)を同時に測定し,急性期,回復期の値を比較した.【結果】IL-5, IL- 6, G-CSF, IP-10, IL-2Ra , IL-18, HGF, M-CSF, MIGは急性期に回復期に比較して高い値を示し, SCGF-βは回復期に高い値を示す傾向であった.【まとめ】今回得られた結果をもとに症例数を増やし,川崎病における血清サイトカイン,ケモカインの動態についてより詳細に検討したい.

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