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成人期に達した巨大冠動脈瘤を合併する川崎病後遺症患者の管理は,抗凝固療法だけでは不十分である?
愛媛大学大学院医学系研究科小児医学1),愛媛大学医学部附属病院脳卒中・循環器病センター小児循環器部門2)
檜垣高史1,2),山本英一1,2),松田 修1),中野威史1),村上至孝1),太田雅明1),長谷幸治1),村尾紀久子1),高橋由博1),千阪俊行1),石井榮一1)

【背景】巨大冠動脈瘤を合併した川崎病患者においては,抗凝固療法が行われていても遠隔期に狭窄や閉塞を来す症例があり,成人期に達した症例においてはその危険性は増大するため,新しい治療戦略を検討する必要がある.【目的】当科で経験した巨大冠動脈瘤を有する川崎病後遺症症例を検討し遠隔期の治療方針を再考する.【対象】1977~2009年の経過観察期間中における巨大冠動脈瘤合併川崎病後遺症27症例,53病変.男20例:女 7 例(男:女 = 2.9:1),発症年齢は,0.2~8.7歳(平均2.5歳),経過観察期間は,0.4~32年(平均16.9年).【方法】巨大冠動脈瘤の部位,臨床経過,長期予後,遠隔期の治療などについて後方視的に検討した.【結果】1 枝病変は,19例(70%)で,右冠動脈 7 例,左冠動脈12例であった.2 枝病変は,7 例(26%),3 枝病変は 1 例(4%)であった.巨大冠動脈瘤27症例の経過は,A群:巨大瘤 + 狭窄なし群10例,B群:巨大瘤 + 狭窄あり群10例,C群:縮小 + 狭窄なし群 5 例,D群:正常化群 2 例に分類される.A群のうち 1 例は巨大化,血栓性閉塞による急性心筋梗塞 1 例,血栓性狭窄による狭心症 1 例,無症候性閉塞 1 例であった.B群では,虚血のためCABGが 2 例,1 例は突然死した.D群の 2 例はともに乳児期発症で,冠動脈造影で完全に正常化を認めた.全症例のうち 4 例において,急性血栓性閉塞が認められた.3 例は20歳以上で,そのうち 2 例は狭窄病変のない症例で,厳しいワーファリンコントロールにもかかわらず急性血栓性閉塞が認められた.【考案および結論】巨大冠動脈瘤を有する症例において,特に成人期に達した症例ではリスクが高く,抗凝固療法のみでは急性血栓性閉塞を完全に避けることは不可能で,十分な治療法とはいえない.狭窄病変を伴わなくても急性血栓性閉塞を回避するためには,何らかの追加治療が必要である.

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