I-P-86
生後 2 カ月以下と 3 カ月発症の川崎病の経過比較
日本大学医学部小児科学系小児科学分野
田口洋祐,鮎澤 衛,中村隆広,市川理恵,福原淳示,松村昌治,阿部 修,谷口和夫,金丸 浩,住友直方,岡田知雄

【目的】これまでの経験と全国調査データなどから,乳児期の川崎病は,生後 3 カ月から発症者が急増する.生後 2 カ月以下と生後 3 カ月での川崎病の発症様式と経過の違いを検討する.【対象と方法】1980年からの28年間に日本大学板橋病院小児科へ入院加療した川崎病のうち,発症時 2 カ月以下の15例(N群)と,発症時 3 カ月の36例(3M群)について,各急性期症状の有無と出現病日,入院時検査所見,IVIG施行率と方法,心合併症を含む予後などについて後方視的に比較検討した.【成績】急性期症状では,主要 6 症状の頻度は 2 群間に有意差はなかった(以下NS).以下,結果をN群 vs 3M群と表記すると,口腔症状と発疹の出現病日はおのおの2.4 vs 3.5,2.2 vs 3.0とN群で有意に早かった(各p = 0.03,0.04).不全型の頻度は23% vs 24%(NS).IVIG施行率は93% vs 59%で有意差(p = 0.01)を認めたが,1990年以降は100% vs 78% (NS).IVIG平均総投与量は,2.1 vs 0.9 g/kgで有意(p = 0.04)にN群が多く,90年以降に限ると2.5 vs 1.4g/kg(NS:p = 0.09).平均投与開始病日は5.0 vs 4.4日(NS).冠動脈障害合併率は26.7% vs 25%(NS).死亡例は 0 vs 2 例で死亡原因は心筋梗塞の疑いと剖検後も原因不明の突然死であった.検査所見については現在分析中である.【結論】1,2 カ月児の例は,3 カ月児よりも,口腔症状と発疹の出現が早く認識され,IVIGの投与は少し遅いが投与量は多かった.3 カ月発症例でIVIG非施行例がみられた.冠動脈障害の発生頻度には差がなく,ともに約25%と高率であった.この 5 年間で 3 カ月例は 2 例であったのに対し,1,2 カ月例が 6 例経験されており,2 カ月以下の例に対する診断,治療に対するさらなる検討が必要である.

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