I-P-87
川崎病後巨大冠動脈瘤—心筋梗塞を予防するための慢性期管理—
東京都立清瀬小児病院循環器科
玉目琢也,永沼 卓,知念詩乃,松岡 恵,大木寛生,三浦 大,佐藤正昭

【背景】川崎病後に巨大冠動脈瘤(巨大瘤)を合併した患児にとって,心筋梗塞(MI)を予防するために,ワーファリンの内服が推奨されているが,その効果は定かではない.【方法】最近30年間当院に入院した川崎病症例中巨大瘤(内径 8mm以上)を生じた32例(年齢 3 カ月~9 歳 2 カ月,中央値 2 歳 4 カ月,男24名,女 8 名,観察期間 4 カ月~24年 8 カ月,中央値11年 7 カ月)を後方視的に調査した.【結果】巨大瘤の発生部位は右冠動脈(RCA):27/32人(84.4%),左冠動脈主幹部(LMT):4/32人(12.5%),左冠動脈前下行枝(LCA):19/32(59.4%)であった.32例全例に抗血小板薬内服を行ったが 7 例(23%)にMIを生じた.7 例中 5 例(71%)が川崎病発症後 3 カ月以内,7 例全例が 2 年以内にMIを生じた.14例にワーファリン内服を併用した(target PT-INR 1.5~2.0).そのうち巨大瘤出現時ワーファリン内服を開始した 9 例全例にMIを生じなかった.巨大瘤内血栓に対する冠動脈内血栓溶解療法後にワーファリン内服を開始した 1 例,MI発症後にワーファリン内服を開始した 5 例中死亡した 1 例以外の 4 例にも新たなMIを生じなかった.つまり抗血小板薬・ワーファリン内服併用下のMI合併率は 0%であった.MIを生じた 7 例は特に予後不良(死亡 3 例,頭蓋内出血 1 例,低酸素性脳症 1 例,心室性頻拍 1 例,狭心症 1 例:ロータブレータによる冠動脈形成術で改善)で,残り25例は狭心症 2 例(ロータブレータによる冠動脈形成術で改善 1 例,冠動脈バイパス術で改善 1 例)以外無症状であった.【考案】巨大瘤を生じた場合,予後不良因子であるMIは川崎病発症後 3 カ月以内に多いため,巨大瘤出現時から抗血小板薬・ワーファリン内服を併用することでMIを予防することが重要と考えられた.

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