I-P-88
基礎疾患を伴わない小児期発症冠攣縮性狭心症(vasospastic angina)の 2 例
枚方市民病院小児科1),大阪医科大学小児科2)
小田中豊1),奥村謙一2),尾崎智康2),岸 勘太2),森 保彦2),玉井 浩2),笠原俊彦1),田辺卓也1)

【はじめに】冠攣縮性狭心症(VSA)は,冠攣縮によって生ずる症候群である.器質的冠動脈疾患と同じく,50歳代以降に多く,小児期においてはまれである. 今回われわれは,川崎病や膠原病などの基礎疾患を伴わない小児で,胸痛発作を主訴に来院し,アセチルコリン負荷試験を含む冠動脈造影検査にてVSAと診断した 2 例を経験したので報告する.【症例 1】11歳,男児.早朝安静時に嘔気,呼吸困難を伴う前胸部痛を訴え,救急外来を受診した.トロポニンT陽性,心電図にてV2,V3でST上昇を認めた.心臓超音波検査を施行するも明らかな局所壁運動の低下は認めなかった.3 時間で胸痛は自然消失したが,経過中の心電図にてV1~V3でT波の陰転化を認めた.第 6 病日に施行した心臓カテーテル検査にて,アセチルコリン負荷試験を行い,左前下行枝遠位部の狭窄を認めVSAと診断した.【症例 2】14歳,女児.2 年前に胸痛発作があり,心筋炎と診断されていた.早朝安静時に呼吸困難感と胸部違和感を認め救急外来を受診した.トロポニンTおよびH-FABP陽性,心臓超音波検査および心電図では異常を認めなかった.入院後,胸痛発作が増悪し,心電図にてII,III,aVf,V3~V6でST上昇を認めた.冠動脈疾患を疑い,ニトロペン1T舌下したところ症状および心電図変化は改善した.第31病日に施行した心臓カテーテル検査にて,アセチルコリン負荷試験を行い,左回旋枝にびまん性の90~99%の狭窄と血流遅延を認め,左前下行枝にも軽度びまん性狭窄を認め,VSAと診断した.【考察】小児の胸痛発作の原因は,特発性,筋骨格系・心因性,呼吸器系,心血管性などさまざまである.心電図変化を伴うものや心筋逸脱酵素の上昇がある場合は,心筋炎や心膜炎が最も考えられる.しかし,本症例のように基礎疾患がない小児においても,VSAなどの冠動脈疾患を念頭におく必要があると考えられた.

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