I-P-90
小児(12歳以下)川崎病冠動脈病変に対するCTの有用性と限界
国立循環器病センター小児循環器診療部1),放射線診療部2)
松尾 倫1),神崎 歩2),古川央樹1),山本雅樹1),平田拓也1),黒嵜健一1),津田悦子1),内藤博昭2)

【目的】心拍,呼吸等の影響の大きい小児(12歳以下)川崎病冠動脈病変に対してCTによる形態の評価がどこまで可能であるか,選択的冠動脈造影(CAG)と比較し,その有用性について検討する.【対象・方法】対象は,2007年 7 月~2008年12月にCTを施行した川崎病冠動脈障害を有する12歳以下の症例で 3 年以内にCAGを施行している10例.冠動脈バイパス手術施行症例 2 例を含む.CT施行年齢は10カ月~12歳(中央値 8 歳),体重 9~64kg(中央値25kg),平均心拍数59~135/min(中央値83),CAGとの検査間隔13~1,092日(中央値356).CT装置はシーメンス社DSCTを用いた.呼吸停止はせず,安静の保てない症例に対してはトリクロリールシロップにて鎮静を行った.主要冠動脈セグメント(seg 1~4,seg 5~7, seg 11~13)ごとにCAG所見との比較を行った.【結果】CTによる主要冠動脈セグメントの描出率はseg 1~2, 5~7 に関しては100%,seg 3~4 では70%,seg 11では90%,seg 13では60%.CAGにて認められた動脈瘤,閉塞病変はCTにて90%同定でき,動脈瘤径の計測はCTとCAG間で相関係数0.82と良好な結果が得られた.3 例 7 病変において血管壁の肥厚,2 例 2 病変において血栓の確認が可能であった.呼吸・石灰化・手術などの影響から狭窄病変の評価はいずれの症例においても困難であった.【考察】川崎病による冠動脈病変が主に冠動脈主幹部に好発することから学童期以前の症例に対しても動脈瘤の同定,閉塞・石灰化・血栓の有無に関してはCAGに比べ低侵襲であり有用であると思われた.ただし,狭窄部の検出,程度の評価は困難であり,巨大瘤など狭窄病変のリスクの高い症例などはCAGによる評価が必要であると考えられた.

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