I-P-91
心室中隔欠損孔閉鎖術前後の大動脈弾性特性変化に関する検討
秋田大学医学部生殖発達医学講座小児科学分野1),外科学講座心臓血管外科学分野2)
小山田遵1),豊野学朋1),島田俊亮1),岡崎三枝子1),山本文雄2),田村真通1)

【背景】体外循環を使用する心臓手術周術期には全身の炎症反応,凝固線溶系の変化などさまざまな変化が生体に引き起こされるが,小児心臓手術において術前後で動脈壁硬度がどの程度変化するかの知見は少ない.【目的】小児心室中隔欠損症(VSD)例における術前後の大動脈弾性特性の変化とその関連因子の検討.【対象】当院にてVSD閉鎖術を受けた15例と正常群10例.患児群の手術時年齢(歳)0.58 ± 0.25(0.3~1.2).術後期間(年)0.87 ± 0.8(0.2~3.3).【方法】二次元経胸壁心エコー左室長軸像にて術前および術後の大動脈収縮期径係数(AoSI;mm/m2),大動脈拡張期径係数(AoDI;mm/m2)を計測した.大動脈弾性特性の指標として大動脈収縮期および拡張期径,上腕動脈の非観血的動脈圧を用いて,aortic stiffness index(ASI),aortic distensibility(AD;cm2/dyne×10-4),aortic strain(AS;%)を算出し,術前心臓カテーテル検査で得られた各血行動態指標とあわせて検討した.【結果】術後患児群は正常群に比してASIが有意に高値,ADおよびASが有意に低値を示した.AoSI,AoDIは術後患児群と正常群の間に有意差を示さなかった.患児群では術前に比して術後でAoSI,AoDI,ADおよびASが有意に低値を示した.患児群において術前体血流量(l/分/m2)は術後ASIと有意な正の相関を,術後ADおよびASと有意な負の相関を示した.術後期間は術後ASと有意な正の相関を示した(すべてp < 0.05).手術時年齢,検査時年齢,体外循環時間,大動脈遮断時間は各大動脈弾性特性指標と有意な相関を示さなかった.【結論】患児群は術前に比して術後で大動脈弾性特性が低下していたが,術後長期ほどその変化が改善している傾向を示した.今回の結果は,手術もしくは人工心肺の影響が術後の大動脈弾性特性の変化に関連していた可能性,またその変化が時間経過とともに改善する可能性を示唆した.

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