I-P-92
新生児期重症三尖弁閉鎖不全に対する手術成績とその予後
九州厚生年金病院小児科1),心臓血管外科2)
上田 誠1),大野拓郎1),渡辺まみ江1),弓削哲二1),岸本小百合1),熊本 崇1),倉岡彩子1),城尾邦隆1),落合由恵2),井本 浩2),瀬瀬 顯2)

【背景】新生児期に手術を要する重症三尖弁閉鎖不全(TR)の自然歴は不良である.また,同時期の三尖弁形成術(TVP)とその予後に関する報告は少ない.【目的】当院におけるTVPの成績および予後を検討する.【対象】1996年 1 月~2009年 1 月に新生児期にTVPを実施した重症TRを伴う 5 例.基礎心疾患の内訳は,PA.IVS 2,DILV 1,TV腱索断裂 1,IAA(B) 1.在胎週数38.5 ± 1.2週,出生体重2,915 ± 192g,手術時日齢15.0 ± 9.0,手術時体重2,410 ± 350g,CPB時間145.8 ± 41.2分.術前,全例アシドーシスはなく,尿量も保たれていた.生存 3,死亡 2 例.【症例 1】胎児水腫で出生した三尖弁腱索断裂.CTR 73%,RVEDV 318%N,TVA 17.0mm(139%N),RVEF 59%.日齢26 TVPを実施.TR 3°,CTR 62%と改善し,月齢 5 の現在も生存中.【症例 2】DILV.CTR 73%,TVA 12.0mm(100%N),TVの前尖と中隔尖の接合が不良であった.日齢 9 PABおよびTVPを実施.粘液腫様の変化を伴うcleftがあり,Kayおよびcleft縫合を行い,術後CTR 56%,TR 3°と改善した.月齢 6 BCPS時にTVPを追加し,TVA 6.0mm(37%N)となったが,TRは消失.現在も生存中.【症例 3】PA.IVS.CTR 87%,TVA 14.7mm(117%N).RVEDV 313%N, RVEF 55.6%.日齢26 RVOTRおよびTVPを実施.術中所見は,中隔尖には腱索がなく,前尖と後尖は低形成であった.術後CTR 56%と改善し術後 7 年で生存.現在,TR 3°,TVAは30.9mm(107%N),TSなし.【症例 4】IAA(B), VSD, del 22q11.2.LVEFは32%と低値だったが,心不全治療により46%まで改善し,日齢 6 根治術を実施.中隔尖が結節状であった.TVAは20mmから12mmへ縮小.術後経過は順調だったが,縦隔洞炎で術後 8 日目に死亡.【症例5】PA.IVS.CTR 90%,TVA 29.3mm(233%N).RVEDV 347%N,RVEF 57.6%.日齢 9 RVOTR,TVPおよびBT shuntを実施.中隔尖と後尖の低形成と,中隔尖の下方偏位を認めた.低酸素血症のため手術当日に死亡.【結論】新生児重症TRは,手術介入により良好な予後が期待できる.

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