I-P-93
外科的治療を要した乳児期発症急性僧帽弁閉鎖不全の検討
国立循環器病センター小児循環器診療部1),心臓血管外科2)
鳥越 司1),坂口平馬1),北野正尚1),黒嵜健一1),萩野生男2),鍵崎康治2),八木原俊克2)

【背景・目的】乳児期の急性僧帽弁閉鎖不全(MR)をまれに経験するが原因不明なものが多い.今回これらの特徴,原因について検討した.【対象】2001~2008年に当科で経験した 8 症例.【方法】後方視的に診療録を調査.【結果】男 4 例女 4 例.発症月齢 2~6 (平均4.3)カ月.初診時症状は発熱 3 例,咳 3 例,呼吸障害 3 例,活気不良 2 例,顔色不良 2 例.当科入院までに全例が呼吸障害を呈し 3 例がショックへ悪化し心肺蘇生術を施行された.エコーでのMRはsevere 6 例・massive 2 例,逸脱は前尖 4 例・前後尖 4 例,疣贅や冠動脈奇形は認めなかった.手術は脳出血合併例 1 例を除き 6 例が入院当日,1 例が入院翌日にされた.4 例が弁形成術,3 例が人工弁置換術,1 例が弁形成術後の新たな腱索断裂により人工弁置換術を要した.病理検査は 4 例炎症細胞浸潤を認め,全例細菌は認めず.血液培養も全例で陰性.術後炎症反応陰性化まで平均39日間(弁形成術例は15.2日間,弁置換術例は54日間)で長期抗生剤投与を要した.退院時エコーでMRは弁置換術例はtriv,弁形成術例はslight~moderate.合併症は中枢神経障害 3 例(痙攣 1 例,脳萎縮・脳出血 2 例)(全例術前に心肺蘇生施行例),不整脈 3 例(心房頻拍 2 例,洞不全症候群 1 例)(全例弁置換術症例)だった.術後平均観察期間3.2年で全例MR増悪はないが,2 例で発達遅延,1 例で不整脈を認めた.自己免疫機序の検索で自己抗体検査は 1 例抗DNA抗体軽度上昇を認めた.【考察】本症は急激に進行し早期の手術治療を要する.術前心肺蘇生例は中枢神経後遺症を残し,弁置換術例は機械弁サイズの問題から不整脈が生じやすい.明らかな感染,自己免疫が原因である所見は認めず原因不明だが,発症年齢,臨床像から感染以外の疾患群が想定され今後症例蓄積が必要である.

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