I-P-94
到着時心肺停止(CPAOA)で受診し,初めて心疾患と診断された 3 例
埼玉県立小児医療センター総合診療科
関島俊雄

【背景】小児の到着時心肺停止(cardiopulmonary arrest on arrival:CPAOA)の原因は多岐にわたり,確定診断ができないケースも多い.本邦における小児CPAOAに占める心疾患に関しては統一されたデータがない.【目的】心疾患を疑われないで当科に搬入されたCPAOA症例のなかに,心疾患が含まれているかを検討すること.【方法】当院は小児専門施設で救命センターや救急指定病院ではないが,2002年 4 月より地域からの小児CPAOA症例の依頼に対しても対応している.2002年 4 月~2008年12月に当科で扱ったCPAOAを,後方視的に検討した.【結果】47例のCPAOAを経験した.15例で解剖(病理,行政,司法解剖を含む)が施行されていた.3 例の心疾患において剖検により急性心筋炎 2 例(自己心拍再開例)と拡張型心筋症 1 例の診断が得られた.このうち自己心拍が再開した 2 例では,生存中のモニター心電図で異常があった.全体のCPAOAの少なくとも約 6%,剖検症例中20%に心疾患が存在していた.【考察】小児の心肺危急事態に至る症例は呼吸原性心停止が多いといわれているが,心原生心停止も少なからず存在していた.剖検が必ずしも全例で施行されておらず,心疾患を疑われて受診した場合には,別の経路(循環器科)で対応されており,心疾患の含まれる割合がこれより高い可能性があった.不整脈による機能性異常に対しては,病理解剖のみで診断することは困難で,別の解析方法が必要と考えられた.【結論】当科で経験したCPAOAのなかには,心疾患が少なからず存在していた.今後この分野の研究を進めるためには,小児救急医と小児循環器科医のコラボレーションと,心肺停止症例を包括的に登録するシステムの構築(必要な検査項目と研究的な検査の依頼先の一覧など)が必要である.

閉じる