I-P-96
心室細動による小児院外心停止は予後不良か— 2 救命例の検討—
信州大学医学部小児医学
元木倫子,清水 隆,伊藤有香子,赤澤陽平,北村真友,小池健一

【背景】小児の院外心停止の生存率は 2~10%と低く,高率に神経学的後遺症を合併するとされている.【目的】予後不良とされている院外心停止例で神経学的後遺症を残さず蘇生し得た 2 症例について,文献的考察を加え報告する.【症例 1】大動脈弁狭窄で運動制限されていた13歳男児.フットサル中に心肺停止となり,目撃していた教師により直ちに心肺蘇生術(CPR)が開始された.その後,救急隊によるAED使用で心室細動(Vf)が解除され,当院に搬送された.心肺停止から50分後に心拍再開した.後遺症なく独歩で退院し,のちに大動脈弁置換術が施行された.【症例 2】家族性肥大型心筋症の12歳男児.登校中に突然,意識消失した.救急隊到着時Vfによる心肺停止の状態であり,CPRと除細動が施行された.来院後の二次救命処置にもかかわらず,無脈性心室頻拍が持続していたため,来院から37分後に経皮的心肺補助(PCPS)が開始された.意識消失から約 1 時間30分後心拍再開した.著明な心機能低下を認めたため大動脈内バルーンパンピング(IABP)も導入された.その後,拡張相肥大型心筋症となり,抗心不全療法を施行した.不整脈に対しては,アミオダロン内服と植え込み型除細動器(ICD)挿入術が施行された.大きな神経学的後遺症を残さず,独歩で院内学級に通学可能となった.【考察】症例 1 は目撃者(市民)による迅速なCPRが,神経学的予後を改善した可能性がある.症例 2 は目撃者によるCPRがなかったにもかかわらず,生存が得られた.胸骨圧迫のみでは脳機能保護に限界があるとされており,来院前後のCPRに加え,迅速にPCPSを導入できたことが救命と重大な神経学的合併症を残さなかった要因であると考えられた.【結論】市民への一次救命処置の教育が重要であり,迅速な一次および二次救命処置に引き続く,心肺蘇生法としての経皮的心肺補助(PCPS)を考慮に入れるべきである.

閉じる