I-P-98
小児心疾患における心筋傷害マーカー—心筋代謝による検討—
弘前大学医学部小児科1),保健学科2)
嶋田 淳1),今野友貴1),北川陽介1),大谷勝記1),高橋 徹1),伊藤悦朗1),米坂 勧2)

【緒言】成人心不全において心筋傷害マーカーは病態評価や予後推定に有用とされているが,小児での検討は少ない.小児心疾患における心筋傷害マーカーの心筋からの分泌について検討した.【対象】心臓カテーテル検査を行った心疾患患者51例.1~26歳,平均9.3 ± 6.1歳.先天性心疾患25例(VSD 6, ASD 6, PDA 6, その他),心筋疾患 9 例 (HCM 5, DCM 4),心筋虚血を伴わない川崎病冠動脈障害17例.NYHA分類 1 度46例,2 度 5 例.【方法】心臓カテーテル検査により冠静脈洞(CS)および大動脈バルサルバ洞(Ao)から採血.ANP,BNP,心筋傷害マーカーとして心臓型脂肪酸結合蛋白(HFABP),ミオグロビン(Mb),CK,CK-MB,トロポニンT(TnT)の各血中濃度を測定し,CSの濃度-Aoの濃度(CS-Ao)を心筋からの分泌の指標とした.心筋特異的マーカーであるTnTはCSで検出(≧ 0.01ng/ml)された場合にTnT陽性とした.【結果】HFABP濃度はCSでAoに比べ有意に高値を示したが(5.2 ± 4.6 vs 4.6 ± 4.1ng/ml,p = 0.0004),心不全やANP,BNPとの関連は認めず.Mb,CK,CK-MBはCS,Ao間で有意差なし.TnT(CS)濃度は心不全症例(いずれも心筋疾患)で有意(p < 0.0001)に高値を示し,ANP(CS)濃度(r = 0.30, p = 0.03),BNP(CS)濃度(r = 0.75, p < 0.0001),BNP(CS-Ao) (r = 0.75, p < 0.0001)と有意な正の相関を示した.TnT陽性例(n = 12)は陰性例(n = 39)に比し,BNP(CS-Ao)は有意に高値を示した(209 ± 31 vs 13 ± 18pg/ml, p = 0.0002).【考察】HFABP,Mb,CK,CK-MBは心筋以外に骨格筋など他臓器からも分泌されるため,心筋からの分泌をより正確に反映するCS-Aoを測定した.HFABPは心筋からの分布は認めるが,病態との関連は認めなかった.TnTは心筋傷害による筋原線維の分解により血中に遊出するが,今回,心筋疾患において心不全の重症度と相関して心筋から分泌されることが示唆された.重症度や治療効果判定の指標になると考えられた.

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