II-S1-1
早期Fontan completionの遠隔期における有用性と懸念—Fontanの術式変遷と成績からみたその妥当性—
国立循環器病センター心臓血管外科1),小児循環器診療部2)
鍵崎康治1),八木原俊克1),萩野生男1),平 将生1),齋藤友宏1),藤原立樹1),白石 公2)

当施設では1979年にAPCでのFontan手術を開始し,1987年intraatrial grafting(IAG)/intraatrial rerouting(IAR)TCPC,1995年にextra-cardiac TCPC(ECT)を導入し現在に至っている.ECT導入後はoff-pump Fontanに取り組み,Fontan手術の低侵襲化と低年齢化を目指している.早期Fontanは,将来的な心機能や運動能の改善が期待される一方でさまざまな懸念も存在する.中・長期遠隔期成績からみた現在の取り組みの妥当性を検討した.【対象と方法】1980~2008年のFontan手術は(TCPC conversionを除く)392例.APC 57例,IAG 65例,IAR 46例,ECT 224例.ECTのうち,Goretex使用(ECT-GT)187例,有茎自己心膜ロール使用(ECT-PAPR)31例,肺動脈―下大静脈直接吻合(ECT-PID) 6 例であった.手術時平均年齢はAPC 5.8y,IAG 5.9y,IAR 4.6y,ECT-GT 3.6y,ECT-PAPR 2.5y,ECT-PID 2.2y.ECTのうち125例(56%)はoff-pumpであった.【結果】累積生存率はAPC 10y 59.6% 15y 55.8%,IAG 5y 76.5% 10y 76.5%,IAR 5y 89.1% 10y 83.5%,ECT-GT 5y 93.5%,ECT-PAPR 5y 90.2%,ECT-PID 5y 100%であった.ECTにおいて手術時年齢 2 歳未満と 2 歳以上で術後挿管時間,ICU滞在日数はそれぞれ,106 ± 338時間,161 ± 350時間,13 ± 15日,15 ± 17日と差はなかった.術後 5,10年での心係数は,Fontan手術時年齢と負の相関を示し,10~15歳時における心係数(l/min/m2)は手術時年齢 2 歳未満:3.1 ± 0.5,2 歳以上2.6 ± 0.5と有意に 2 歳未満で高値(p:0.0008).IAGおよびECT-GTでの人工血管の閉塞/狭窄に伴う再手術はなく,人工血管の断面積(mm2)は 5 年127 ± 38,10年134 ± 36,15年149 ± 39と遠隔期においても進行性の狭窄は認めなかった.【まとめ】 1 歳代での早期Fontan completionは遠隔期での心機能に好影響を与えると考えられる.またFontanにおける人工血管の使用は必ずしも遠隔期のmorbidityに関与しない可能性がある.

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