II-S1-5
Fontan術後のチアノーゼを残さないために—小児科・心臓外科の協働アプローチ—
九州厚生年金病院小児科1),心臓血管外科2)
渡辺まみ江1),大野拓郎1),弓削哲二1),岸本小百合1),熊本 崇1),倉岡彩子1),城尾邦隆1),井本 浩2),落合由恵2),瀬瀬 顯2)

Fontan手術(F術)後チアノーゼの原因として肺動静脈瘻(PAVF)・右左残存シャント・VV-collateralがあげられる.ハイリスク症例の選定,グラフト吻合部位の工夫,原因検索,シャント閉鎖術やコイル塞栓術などを小児科・心臓外科が協働して取り組んできた.【目的】F術後のチアノーゼの有無と原因,治療内容と効果について検討する.【対象】2008年12月現在経過観察中のF術後患者93名.心形態はSV 23,DORV 18,TA 15,PA.IVS 11など.術式はlateral tunnel(LT)法24,心外導管(EC)法69で術後観察期間は8.5 ± 4.3年.【方法】対象の(1)F術直後と最終外来受診時SpO2,(2)チアノーゼの原因(SpO2値にかかわらず原因となるものを後方視的に検索), (3)heterotaxiaの有無とTCPS既往,(4)検査内容,(5)治療した24名について a)治療内容 b)治療前後のSpO2の変化について検討した.【結果】(1)F術直後94.2 ± 4.6%最終外来受診時94.8 ± 3.7%.(2)VV-collateral 61,右左シャント 24,PAVF 12例.(3)無脾14,多脾11で 7 がTCPS既往.PAVF12中 8(67%)が多脾で,6(50%)がTCPS既往.(4)血管造影全例,コントラストエコー(カテ中88,末梢10),上下肢でRIを分離注入した肺血流シンチ 44,CT 28.5) a)右左シャント外科的閉鎖 2,re-direction 2,早期TCPC完成 2,coil塞栓術 19.b)SpO2は治療前後で平均90.7→95.7%と上昇し,coil塞栓術93.0→96.2%,右左シャント閉鎖87→94%,re-direction 81→93.5%,PAVFのため早期TCPC完成の 2 例は術直後80.5→ 6 カ月後95.5%と,外科治療群では特に改善が著しかった.治療群の最終外来SpO2は92.8%と,無治療群95.4%に比較しやや低値だった.【結語】F術後のチアノーゼに対するcoil塞栓術,右左シャントの外科的閉鎖術は有効で,PAVF発生に対しては左右バランスのとれた肝血流分布,ハイリスクである多脾症の早期TCPCの完成が重要である.長期経過でPAVFやVV collateralの再発は懸念され,継続した慎重なfollowが必要である.

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