II-B-3
低酸素換気療法のために開発した窒素空気ブレンダー(NA-2000)および酸素濃度計(NAM-2000)を用いた肺血流増加型心不全の治療経験
山梨大学医学部小児科
星合美奈子,内藤 敦,角野敏恵,戸田孝子,勝又庸行,喜瀬広亮,杉田完爾

【はじめに】窒素を用いた低酸素換気療法は肺血流増加型重度心不全に対して非常に有効であり,多くの施設で施行されているがその適応,施行方法についての明確な基準はない.当科では本治療をより安全,簡便に施行するため,精密な窒素空気ブレンダーと酸素濃度計をサンユウテクノロジーと共同開発し2006年本学会で報告した.今回,これらを用いた治療経験について報告する.【症例,方法】2006~2008年度にかけて,NA-2000,NAM-2000を使用し計21例(計28回)に対し低酸素換気療法を施行した.このうちチアノーゼ型心疾患19例で,術前20回であった.方法はhead box内あるいは経鼻投与が術前11回,術後 4 回,計15回で,人工呼吸管理下が13回であった.【結果】吸入酸素濃度は平均18.7%で,投与方法による差はなかった.治療開始から 2 時間以内に全例で血圧上昇,排尿増加が得られ,アシドーシスを有する場合も24時間以内に軽快した.また治療中の急激な吸入酸素濃度の低下や本治療による合併症はなく,以前の工業用酸素濃度計によるモニターのみの管理と比べて吸入酸素濃度を持続的に一定に保つことが可能であった.【考察】(1)本治療の主な対象は,チアノーゼ型心疾患,特に動脈管依存性心疾患であった.この場合SpO2は血圧の影響を受けやすく吸入酸素濃度モニターの代用としては不適切であり,肺血管抵抗も非常に変動しやすいため,吸入酸素濃度の厳重な調節とモニターは不可欠であると考えられた.(2)ブレンダーの使用により自発呼吸下でも安定した吸入酸素濃度が保たれ,良好な心不全コントロールが可能であった.このため術前PGE1持続投与中や体肺シャント術後の症例において,哺乳しながらの体重増加や挿管期間の短縮といった多くの利点を得られた.【まとめ】低酸素換気療法には精密な窒素空気ブレンダーと酸素濃度計が是非必要で,これにより安全,簡便な管理が可能となり,治療適応も拡大できるものと考えられた.

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