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II-C-8 |
川崎病患者における蛋白分解酵素の不均衡と冠動脈病変 |
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科
中川 良,先崎秀明,岩本洋一,小林俊樹,石戸博隆,葭葉茂樹,竹田津未生,増谷 聡,関 満 |
【背景】細胞外基質は,それを分解する蛋白と,その内因性inhibitorとの相互作用で常に代謝更新され,適正な環境が保たれている.Matrix metalloproteinase(MMP)およびplasminogen activator(PA)/plasminとそのinhibitor であるPAI-1は,この細胞外基質代謝の中心的役割を演じており,われわれは,MMPとPAI-1の活性化が川崎病における冠動脈病変発生に関与している可能性を報告してきた.今回われわれは,これら蛋白酵素の川崎病冠動脈病変形成における病態生理学的意義をさらに明らかにするために,MMPとその上位抑制系であるPAI-1の相互関係について検討した.【方法】川崎病患者47例,正常対照群18例において,血中MMPおよび,PAI-1の濃度を酵素免疫定量法にて調べ,冠動脈病変発生との関連について調べた.【結果】前回までの報告同様,川崎病患者における入院時の各MMPおよびPAI-1は,正常群に比し有意に上昇していた(p < 0.005).冠動脈病変形成と関連あるMMP9とPAI-1は有意な正の相関を示したが,川崎病冠動脈病変群の相関係数は非病変群に比し有意に小さい値をとり(0.1 vs 0.9,p < 0.05),MMP9/PAI-1の比も,病変群,非病変群,対象群の順で有意に高値を示し(4.3 ± 0.7vs 2.6 ± 0.5 vs 1.7 ± 0.1,p < 0.001),冠動脈病変形成におけるMMP活性化が,その抑制系を凌駕して存在することを示唆した.【考察】今回の結果は,MMPの活性化は,川崎病冠動脈病変発生の原因であること,PAI-1上昇は,動脈壁炎症破壊の程度に応じ上昇した結果であり,不十分ながらも冠動脈病変発生に関し防御的に作用している可能性を支持する.したがって,MMPまたはPAを阻害する,あるいはPAI-1を賦活化させる薬剤が,瘤発生防止の有効な新しい治療法なり得る可能性を示唆すると思われた. |
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