II-C-13
単心室群における横隔神経麻痺とFontan循環
静岡県立こども病院心臓血管外科
城麻衣子,藤本欣史,廣瀬圭一,大崎真樹,登坂有子,中田朋宏,井出雄二郎,古武達也,坂本喜三郎

【目的】横隔神経麻痺は開心術における合併症の一つであるが,新生児期乳児期早期に発症すると,呼吸管理に難渋し,特に単心室群では肺条件を悪化させる要因となる.今回われわれは術後横隔神経麻痺を発症した単心室群について後方視的に検討した.【対象】1998~2008年に術後横隔神経麻痺を発症した43例(他院発症後に,当院紹介例含む).うち単心室群19例が対象.【結果】発症時期は初回姑息術時:9 例,Glenn前:1 例,Glenn時:5 例,Fontan前:1 例,Fontan時:2 例,Fontan以降:1 例.2 例が経過中に 2 回横隔神経麻痺を発症した.完全麻痺11例(うち 8 例に横隔膜縫縮術施行,さらにうち 1 例は両側縫縮術施行),不全麻痺8 例(うち 1 例に横隔膜縫縮術施行)であった.横隔神経麻痺発症の原因は術中剥離操作が中心であるが,新生児 2 例が中心静脈カテトラブル(Ca持続投与によるカテ周囲の石灰化,SVC閉塞および炎症)であり,この 2 例のみ気管切開を要した.ほかに気管切開症例はなく,全例抜管可能であった.生存例は,Fontan到達11例(完全麻痺 6 例,不全麻痺 5 例),Fontan待機症例 5 例(完全麻痺 2 例,不全麻痺 3 例),病院死 1 例(完全麻痺),遠隔死 2 例(ともに完全麻痺).Fontan到達症例の最終Fontan圧 = 13.6 ± 2.9mmHgで,同時期のFontan施行例中,術後カテ施行139例との比較(11.9 ± 2.4mmHg)では,p = 0.06と有意差までは出なかったが,不良であった.PLE発症 2 例(完全麻痺 1 例:Fontan圧 = 12.5mmHg,不全麻痺 1 例:Fontan圧 = 13mmHg).【考察】横隔神経麻痺を発症した症例であっても,一側完全麻痺ではFontan前に横隔膜縫縮術を行うことで,多くがFontan到達可能であった.ただ生後早期に発症すると呼吸管理に難渋し,横隔膜縫縮術を施行しても,気管切開まで要する場合も存在し,今後の検討を要する.

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