II-C-18
フォンタン術後患者における肝臓病変の検討
東京女子医科大学循環器小児科
清水美妃子,稲井 慶,森 善樹,中西敏雄

【背景】フォンタン型手術は三尖弁閉鎖をはじめとする単心室血行動態の治療として確立しているが,遠隔期に心機能不全や,中心静脈圧の上昇に伴う心房拡大,心房性不整脈が問題となる.近年,そうしたいわゆるfailingフォンタンの患者に対して,TCPC conversionが試みられている.また最近では,うっ血に伴う肝機能低下や,肝臓の線維化,肝硬変を来す症例が散見され問題となっている.【目的】TCPC conversionを施行された症例の肝臓病変を検討する.【方法】当院でフォンタン手術を施行し,遠隔期にTCPC conversionを施行された29例中,腹部超音波と肝臓のCT所見の両方が得られた 9 例について検討した.【結果】基礎疾患の内訳は,三尖弁閉鎖 6 例,両大血管右室起始症 2 例,右室性単心室 1 例.フォンタン手術施行年齢は10 ± 6 歳,TCPC conversion施行年齢は29 ± 7.2歳,フォンタン術後経過年数は21 ± 7.3歳であった.フォンタン術後の中心静脈圧は16.7 ± 2.9mmHg,TCPC conversion後は19.3 ± 2.7 mmHgであった.TCPC conversionの適応理由は,全例で右房の拡大と不整脈であり,血栓を 4 例で合併していた.腹部超音波では 9 例中 6 例で繊維化を認め,肝硬変を 2 例,肝癌を 1 例認めた.CTでは,表面の凹凸・辺縁の鈍化・再生結節・左葉腫大等の肝硬変変化を全例で認め,超音波と同症例で肝癌を認めた.【考察】TCPC conversionの適応症例は,フォンタン術後経過が長く,肝臓は高い中心静脈圧に曝され,慢性のうっ血状態にある.今回CTと超音波の両方で肝線維症・肝硬変と診断されたのは 6 例で,組織所見は得られていないものの,高率に肝臓病変が存在することを示唆する.【結論】フォンタン術後遠隔期にTCPC conversionの適応となる症例では高率に肝臓病変を合併する.

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