II-C-27
Fontan術後の肝機能に関する検討
長野県立こども病院循環器科1),心臓血管外科2)
梶村いちげ1),安河内聰1),瀧聞浄宏1),武井黄太1),井上奈緒1),中野裕介1),田澤星一1),原田順和2),坂本貴彦2),梅津健太郎2),松下 弘2)

【背景】Fontan術後の体静脈圧の上昇が肝うっ血を来し,中に肝硬変,肝癌を合併する症例があるということが知られてきた.【目的】Fontan術後の肝機能を評価し,肝機能増悪因子について検討すること.【対象】当院で経過観察されているFontan術後の98症例(男:女,62:36).疾患は,SLV 33例,SRV 41例,その他24例.Fontan手術の方法は,APCが 6 例,lateral tunnelが 7 例,TCPCが81例,TCPC conversionした症例が 4 例.平均年齢122 ± 63M,Fontan手術施行時平均年齢48 ± 23M,術後平均経過月73 ± 59M.【方法】(a)血液検査(AST,ALT,LDH,ALP,TB,DB,γ-GTP,LAP,ChE,TP,Alb,IgG,IgA,IgM,T-chol,BUN,Cre,P-III-P,ヒアルロン酸,IV型コラーゲン 7s,Hb,Plt,hANP,BNP),腹部超音波検査(結節影の有無)を施行.(b)(1)hANP/BNP,(2)房室弁逆流,(3)EF,(4)PAP,(5)Fontan後経過月,(6)年齢,(7)SRV/SLV,(8)asplenia/polysplenia,(9)HLHS,(10)TAPVC/PVOの合併の有無,(11)腹部超音波検査上の結節影の有無と血液検査との関連について検討すること.【結果】(a)血液検査上,対照年齢平均と比較しγ-GTPは96%,AST/ALTは45/44%,TB/DBは33/42%が+2SD以上であった.また,P-III-Pは85%,IV型コラーゲン7sは68%が正常上限を超えていた.腹部超音波検査上,結節影あり(A): なし(B) = 13: 24.平均年齢は(A)146 ± 63M,(B)76 ± 33M,Fontan後経過月は(A)96 ± 60M,(B)26 ± 24M.(b)(1)高値,(2)高度,(3)低値,(4)高値であるほど,また腹部超音波検査上で結節影を認めた(A)群がTB,DB,γ-GTP,P-III-P,ヒアルロン酸,IV型コラーゲン 7sが高値となる傾向があった.疾患や年月による違いははっきりしなかった.【考察,結論】うっ血肝の指標となる検査項目は一般的に知られていない.TB,DB,γ-GTPは指標となる可能性があり,hANP/BNP高値,房室弁逆流,EF低値, PAP高値は肝機能増悪因子である可能性がある.

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