II-P-2
小児における血漿N末端pro-BNP値測定の有用性についての検討—従来の血漿BNPとの比較—
埼玉県立小児医療センター循環器科1),東京慈恵会医科大学小児科2)
齋藤亮太1,2),小川 潔1),伊藤怜司1),河内貞貴1),菅本健司1),菱谷 隆1),星野健司1),井田博幸2)

【背景】BNPは心不全患者の重症度判定および予後予測のマーカーとして,小児科領域でも広く用いられている.BNPはその前駆ホルモンであるpro-BNPが体内で活性を持つBNPと活性を持たないN末端pro-BNP(以下NBNP)に分解される.NBNPもBNPと同様に心不全の重症度判定のマーカーとして有用であるといわれている.またNBNPはBNPに比べて生物学的活性が安定しており,BNPよりも有用であるといわれているが小児科領域での知見は少ない.【目的】小児においてBNPとNBNPの相関性を検討すること.およびNBNP測定の有用性について考察すること.【方法】(1)当院入院もしくは通院中の心疾患患者から無作為に抽出した77名について,血漿BNP値およびNBNP値を測定し,BNPとNBNPの相関性を評価した.(2)検体を採取後 4°Cで24時間保存し,同一検体で採取後 3 時間,6 時間,9 時間,12時間,24時間後のBNPおよびNBNP値を測定.検体採取後の経過時間が測定値に及ぼす影響について検討した.BNPの測定には東ソー社製Eテスト「TOSOH」 2(BNP)を,NBNPの測定にはBIOMEDICA社製BI-20852 NT-PROBNPを使用した.【結果】(1)BNP値は平均94.2 ± 230.7pg/ml(最小値1.6,最高値1,371.3),NBNP値は平均893.4 ± 783.4 fmol/ml(最小値260.7,最高値4,550.8).BNPとNBNPの間には有意な相関性を認めた(r = 0.91,p < 0.001).(2)検体採取後24時間通してBNP,NBNPともに測定値の明らかな変動は認めなかった.【結論】NBNPは小児においてもBNPと良好な相関性を認めた.またBNPとNBNPの安定性に明らかな差は認めなかった.

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