II-P-3
右肺動脈上行大動脈起始の臨床経過の検討
東京都立清瀬小児病院循環器科1),心臓血管外科2),慶應義塾大学医学部小児科3)
知念詩乃1),三浦 大1),永沼 卓1),玉目琢也1),松岡 恵1),大木寛生1),佐藤正昭1),保土田健太郎2),厚美直孝2),寺田正次2),山岸敬幸3)

【目的】右肺動脈上行大動脈起始(AORPA)は比較的まれな先天性心疾患で多数例の報告は少ない.適切な術前・術後管理を明らかにするため,2 施設で経験したAORPAについて検討した.【方法】1966年から現在までに診療したAORPAの 9 症例のうち,日齢 3 の剖検で診断した染色体異常・左心低形成以外の 8 症例を対象とし,臨床経過について後方視的に調査した.【結果】(1)分類・合併症:画像が得られた 5 例はいずれも近位型であった.先天性心疾患の合併を 3 例に認めた(心室中隔欠損,ファロー四徴症,大動脈肺動脈中隔欠損,各 1 例).(2)年齢・症状:5 例は新生児期に多呼吸(3 例),チアノーゼ(2 例)を主訴に診断され,全例新生児期に手術を受けた. 3 例は 0 歳 7 カ月,10歳,15歳に,それぞれチアノーゼ,血痰,術後カテーテル検査を契機に発見された.このうち,0 歳 7 カ月に発見され 4 歳で手術に至った例は,肺動脈狭窄が合併していた.残り 2 例は診断時にEisenmenger化し手術適応外とされた.(3)手術・術後経過:右肺動脈移植術を 6 例に施行し,術後 5 カ月~32年後もすべて生存している.術後の肺高血圧は,新生児期に手術した 5 例ではみられなかったが,4 歳で手術した 1 例に残存した.術後合併症として,右肺動脈狭窄を 5 例,右肺動脈閉塞を 1 例,大動脈狭窄を 1 例に認めた.右肺動脈狭窄の 3 例に対し,術後 5~11カ月にカテーテルによる肺動脈バルーン拡張術(BPA)を行い,いずれも軽快した.23歳で右肺動脈閉塞を来した 1 例にはBPAは行われていなかった.【考察】AORPAでは肺高血圧が進行しやすいので,予後改善のために早期の診断と手術が重要である.手術時期は,なるべく新生児期が望ましい.術後経過はおおむね良好であるが,好発する右肺動脈狭窄の合併に対し積極的にBPAを行う必要がある.

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