II-P-4
大動脈弁狭窄症の重症度評価法に対する再考
北海道大学大学院医学研究科小児科学分野
山澤弘州,上野倫彦,武田充人,八鍬 聡,古川卓朗

【背景】大動脈弁狭窄症(AS)の重症度評価には侵襲的な心臓カテーテル検査による収縮期頂値同士の圧較差(PPPG),平均圧較差(CMPG),弁口面積,非侵襲的な心臓超音波検査による収縮期最大圧較差(PIPG),平均圧較差(DMPG),弁口面積等がある.近年成人では非侵襲的なDMPG,弁口面積が使用され心臓カテーテル検査結果とも相関が良いといわれる.一方小児ではPIPGが汎用されているが,一般的な治療判断基準であるPPPGに比較し,過大もしくは過小評価するとの報告がある.【目的】PIPGとPPPGの相関について検討する.さらにDMPGによる評価の小児への応用について検討する.【対象・方法】ASの15例に心臓超音波検査,心臓カテーテル検査を施行し,PIPG,DMPG,PPPG,CMPG等を測定,回帰分析を施行した.【結果】各項目の平均 ± SDは年齢10.7 ± 7.8(歳),PIPG58.7 ± 24.0(mmHg),DMPG30.3 ± 14.4(mmHg),PPPG45.7 ± 24.5(mmHg),CMPG43.6 ± 20.4(mmHg)であった.PPPGとPIPG,PPPGとDMPG,DMPGとCMPGには有意な相関を認めた.また回帰式PPPG = 0.90PIPG-7.11,r2 = 0.77,PPPG = 1.67DMPG-3.84,r2 = 0.93,CMPG = 1.36DMPG-0.28,r2 = 0.94が得られた.【考案】PIPGはPPPGに比べ過大評価の傾向を認め,PIPGが圧回復を含まない瞬間最大圧較差であることが一因と考えられた.このためPIPGにより侵襲的検査・治療施行の判断を行う際は注意を要する.近年圧回復を考慮に入れた評価法も報告されているが,肝要なのは完璧な予測ではなく,ある程度正確にかつ簡便に評価できることと考えられる.その点DMPGによる評価は簡便で心臓カテーテル検査結果との相関も強く,小児例においても成人の重症度評価を適用できると考えられた.

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