II-P-5
肺動脈弁上狭窄の自然歴と治療に関する検討
兵庫県立こども病院循環器科
富永健太,佐藤有美,齋木宏文,藤田秀樹,田中敏克,城戸佐知子

【背景】肺動脈弁狭窄はカテーテル治療が効果的な疾患であるが,肺動脈弁上狭窄は自然歴と治療介入による効果は明らかではない.【目的】肺動脈弁上狭窄の自然歴と治療介入の効果を明らかにすること.【対象】2003~2007年の 4 年間に当院循環器科にて肺動脈弁上狭窄の診断がなされ,ほかに心奇形を合併していない症例(肺動脈弁狭窄・卵円孔開存を除く)で,染色体異常の症例,データが不十分であった症例を除いた計20症例を対象とした.【方法】各症例における,右室肺動脈収縮期圧較差(デルタPG)の経過を心エコー検査・心カテーテル検査にて評価した.【結果】男女比は 9:11,初診時月齢中央値:月齢 4(0~27).20症例中,心カテーテル検査が施行されたのは 4 症例であり(A群,残り16症例をB群とする),A群の症例すべてでballoon angioplasty(BAP)が施行された.A群・B群間では初診時の月齢・右室肺動脈収縮期圧較差には有意差を認めなかった.A群でBAP施行前・施行後において,心エコーによる右室肺動脈収縮期圧較差,心カテーテル検査による引き抜き圧較差・右室圧左室圧比(RVp/LVp)には有意差を認めなかった.外来経過観察中,B群においてはデルタPGは悪化傾向を認めなかった.A群においてもBAP施行後,有意な肺動脈弁逆流,デルタPGの悪化傾向は認めず,外科的介入を要した症例はなかった.しかし,デルタPGの改善傾向も認めなかった.【結論】肺動脈弁上狭窄に対し,外来経過観察中にデルタPG 50mmHgを超える症例に対するBAP施行はデルタPGの有意な改善に寄与しなかった.肺動脈弁上狭窄に対するBAP施行規準を厳しくする選択肢の可能性が示唆された.

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