II-P-6
当院で経験した三心房心の 4 例
北里大学医学部小児科1),心臓血管外科2)
本田 崇1),安藤 寿1),木村純人1),中畑弥生1),宮地 鑑2),石井正浩1)

【はじめに】三心房心はまれな疾患で,先天性心疾患の0.1%といわれる.今回,当院で経験した三心房心の 4 症例について報告する.〈症例 1〉9 カ月女児.咳嗽,喘鳴,発熱,食事摂取不良のため喘息性気管支炎の診断にて入院加療されていたが症状の改善なく尿量が低下し呼吸不全を呈したため当院に転院となった.肺野で湿性ラ音を聴取し,心音はgallop rhythm,CTR 60%,著明な肺うっ血のため全肺野で透過性が著しく低下していた.心エコーではaccessory chamberを認め流出口は 2mm,ASDは右→左短絡でありLucas-Schmidt IIaと診断した.直ちに気管内挿管,人工呼吸管理を開始し,緊急で根治手術を行った.〈症例 2〉8 歳 4 カ月女児.生来健康.半年前から労作時の失神を 4 度繰り返していたためてんかんの疑いで当院を紹介受診した.胸部聴診は正常,CTR 53%,軽度の肺うっ血を認めた.心エコーにてaccessory chamberを認めLucas-Schmidt Iaと診断した.流出口は 4mmであった.緊急入院とし心房内隔壁切除を施行した.〈症例 3〉9 カ月男児.8 カ月健診でII音の亢進と心雑音を指摘され,当院を紹介受診した.CTR 52%,軽度の肺うっ血.心エコーでaccessory chamberを認め流出口は3.5mm Lucas-Schmidt Iaと診断した.直ちに心房内隔壁切除を行った.〈症例 4〉7 歳 9 カ月男児.生来健康で,小学 1 年生の健診の心電図で不完全右脚ブロック,左軸偏位を認め,当院を紹介受診した.聴診上,胸骨左縁上部でLevine 2/6の収縮期雑音を聴取した.CTR 46%.心エコーでは 8mm大の流出口を有するaccessory chamberを認めた.今後,心房内隔壁切除術を予定している.【結語】三心房心は主として幼児期までに肺うっ血に伴う呼吸不全,心不全症状で発症するといわれる.今回,心電図異常と労作時失神で発見された学童 2 例を含む 4 例を経験した.診断には心エコー検査が有用であり,学童例でも三心房心も鑑別疾患の一つとして考えておくことが肝要と思われた.

閉じる