II-P-7
PDA依存性を考慮して異なる内科的治療を選択したEbstein奇形の 2 例
愛媛県立新居浜病院1),愛媛大学大学院医学系研究科小児医学2)
森谷友造1,2),高橋由博2),村尾紀久子2),太田雅明2),村上至孝2),中野威史2),松田 修2),山本英一2),檜垣高史2),石井榮一2)

【背景・目的】Ebstein奇形は極めて多様な解剖学的形態を持つ疾患であり,その臨床像も無症状で経過するものから胎児期に心不全・胎児水腫で死亡する最重症例まで幅広い.そのため,治療方針も確立されておらず,治療の選択に難渋する場合が多い.今回われわれは異なる内科的治療が奏効したEbstein奇形の 2 例について検討した.【症例 1】生直後より高度のチアノーゼのため,挿管し人工呼吸器管理を必要とした.肺血管抵抗低下目的で酸素投与とdobtamine,milrinoneの投与を行ったが,SpO2の改善は認められず,NO吸入を開始した.NO吸入開始後は速やかにSpO2は改善し血行動態は速やかに安定した.【症例 2】生直後より心雑音,チアノーゼが認められ当院に搬送された.酸素投与を開始したが改善せず,肺血流を確保するためにPGE1の投与を開始した.開始後SpO2の改善を認めたが,高肺血流となり順行性血流が障害されるため,日齢 1 に中止しPDAを閉鎖する方針とした.Milrinoneの投与を開始し,徐々に血行動態は安定した.【考察・結論】Ebstein奇形の急性期の治療目標は肺血流の確保と肺血管抵抗の低下,三尖弁閉鎖不全のコントロールが重要である.今回肺循環を安定させるためNO吸入とPGE1の投与という方法を選択した.NO吸入は肺血管抵抗を下げ肺血流を確保するが,高度の肺動脈狭窄が合併する場合は効果が乏しい.PGE1は確実に肺血流を確保するが,動脈管開存による高肺血流性の心不全や肺高血圧を引き起こす.Ebstein奇形の内科的治療は三尖弁や肺動脈の形状を考慮しPDA依存性かどうかを判定しながら治療方針を決定する必要がある.

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