II-P-9
当院における新生児危急的心疾患の初期診療の現状
旭川厚生病院小児科1),旭川医科大学小児科2)
梶野真弓1),白井 勝1),沖 潤一1),梶野浩樹2)

【目的】当院における新生児危急的心疾患診断の現状を分析する.【対象・方法】2004~2008年の 5 年間に当院NICU・小児科に入院,もしくは胎児診断した新生児先天性危急的心疾患症例18名.危急的心疾患は左心低形成症候群,大動脈縮窄,大血管転位,総肺静脈還流異常,動脈管依存性肺動脈閉鎖もしくは狭窄,出生直後からの呼吸循環管理を要する重度心不全とした.入院時日齢,主訴,入院前SpO2測定の有無,胎児診断,動脈管閉鎖に伴うショックの有無,予後などを検討した.【結果】18例中胎児診断例 1 名のみ.院内産科の紹介で肺動脈閉鎖と診断し出生直後の外科的治療可能な施設へ外来から母胎紹介.他の17例の入院時日齢は3.4日(0~35日).17例中院内出生は 3 名であり産科からの胎児エコー依頼はなかった.12名が院外からの新生児搬送.2 名は院外産科退院後家族が患児の様子を心配し受診した.主訴はチアノーゼ11名と最も多く,多呼吸・陥没呼吸が 5 名,心雑音 3 名,早産児や仮死で入院が 3 名.入院前SpO2測定がされていたのは14名,出生直後のチアノーゼと仮死・早産のため測定されていた.一方測定されていなかった 3 名は院外出生で入院日齢が17日(2~35日)と遅く主訴は呼吸障害と心雑音であった.診断は左心低形成 2 名,大動脈縮窄 3 名,大血管転位 5 名,総肺静脈環流異常 3 名,肺動脈閉鎖・狭窄 3 名,三尖弁閉鎖 1 名,重症心不全 2 名.入院時ショック状態の児はなく診断後 8 名がlipo PGE1持続点滴を必要とし,10名が緊急もしくはそれに準じた手術およびカテーテル治療目的に即日他院へ転院,待機例含め17例全例が手術のため転院した.手術死亡は 4 名であった.【考察】産科での胎児診断率は低く,大半の症例が出生後当科へ緊急搬送され診断されていた.しかし見逃されていた症例もあり,前医でSpO2測定されていない症例であった.出生前診断率の向上に努めると同時にSpO2測定による心疾患の検出の啓蒙を一層行うべきである.

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