II-P-10
Nuchal translucencyの異常を認めるも,羊水による染色体検査異常を認めなかった胎児における先天性心疾患の検討
国立病院機構香川小児病院循環器科1),心臓血管外科2)
寺田一也1),宮城雄一1),太田 明1),菅野幹雄2),川人智久2),江川善康2)

【はじめに】Nuchal translucency(NT)とは,在胎11週から13週 6 日に胎児後頭部に認められる皮下の液体貯留像であり,胎児超音波スクリーニングマーカーとして利用されている.臨床的意義は染色体異常ばかりでなく,先天性心疾患においても認められている.今回,われわれはNTの増大を指摘され,精査を希望され当科に紹介された症例について診断,治療,予後について検討した.【対象】2003年11月~2006年 8 月に当科胎児心臓外来を受診した514母体,558症例のうちNTの増大を主訴に受診となった48症例.対象は在胎11週から13週 6 日に 3mm以上のNTの増大を認めた症例である.染色体検査は,全48症例において当科紹介前に,当院あるいは,紹介元において羊水検査でG-band法にて正常と確認されている.【結果】診断;先天性心疾患を認めたのは 6 症例で,NT増大48症例の12.5%であった.内訳は,完全大血管転位症 2 症例,総動脈幹症に大動脈弓離断の合併した 1 症例,総動脈幹症 1 症例,心室中隔欠損,肺動脈閉鎖 1 症例,心室中隔欠損,肺動脈弁狭窄 1 症例であった.治療および予後;妊娠中絶を希望された症例はなく,全例自然分娩で出生.当院NICUに入院管理,全症例,予定にて姑息手術および心内修復手術を施行している.【まとめ】胎児心臓超音波検査において,従来いわれていた先天性心疾患の家族歴,糖尿病母体,母体薬物摂取歴などによる先天性心疾患の発生頻度よりNTの増大を伴った先天性心疾患の発生頻度のほうが明らかに高くNTの増大を認める胎児において先天性心疾患を精査することは有意義である.

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