II-P-12
Circular shuntを伴ったEbstein奇形の胎児診断症例
神奈川県立こども医療センター新生児科1),循環器科2),心臓血管外科3)
長澤真由美1),川滝元良1),康井制洋2),麻生俊英3),豊島勝昭1),上田秀明2),柳 貞光2),宮田大揮2)

【はじめに】重症のEbstein奇形において胎児期および新生児期に診断されたものは予後不良のことが多い.今回胎児期より診断された重症Ebstein奇形にcircular shuntを伴った症例を経験したため報告する.【症例】妊娠30週で心拡大を指摘され32週 2 日で当院へ紹介.胎児心エコーにてCTAR 55%,右房(RA)の著明な拡大あり,Celemajor index = 1.35.三尖弁の高度のplastering,三尖弁逆流(TR)1.8m/sec.卵円孔は右左シャントで狭窄は認めず,動脈管(DA)血流は左右シャント,continuous patternの肺動脈弁逆流(PR)を認めた(circular shunt).Lt Tei index = 0.44と左心機能の低下は認めなかった.以上よりcircular shuntを伴うEbstein奇形と診断,出生後直ちにmPA ligationを行う方針とした.妊娠38週 5 日に経膣分娩で出生.体重2,700g,Apgar Score 5/6点.自発呼吸弱く,全身チアノーゼ著明であり気管内挿管施行し人工換気開始した.X線上は心拡大著明(CTR 90%)でありwall-to-wallの状態であった.出生後の心エコー所見は胎児エコーと同様であった.腎血流は出生時よりdiastolic reverse patternであった.入院時pH 7.266,PO2 49.1,PCO2 44.6,BE-5.4,乳酸値40mg/dlとアシドーシス,高乳酸血症を認めた.出生時はDA血流保たれていたが,生後 4 時間頃よりエコー上DAの肺動脈側にridge形成を認めlipo PGE1を2ng/kg/hrで開始した.lipo PGE1開始後はDA血流は保持されたがcircular shuntの状態が続き,乏尿,乳酸値の上昇,アシドーシスの悪化を認めたため,生後17時間(日齢 1)でmPA ligation,DA banding,RA縫縮,BTS留置(3mm径)を施行した.【考察】今回の症例はcircular shuntを伴う重症Ebstein奇形と胎児診断していたため,出生前に手術方針を決定し生後早期に手術に至ることができた.Circular shuntを伴う重症例では生後早期にmPAやDAのligation,bandingを行うことで血行動態の改善を図り得る可能性が考えられた.

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