II-P-14
胎児心疾患の新しいスクリーニングポイント—rt side descending aortaの有用性—
神奈川県立こども医療センター新生児科1),循環器科2),心臓血管外科3)
川滝元良1),康井制洋2),麻生俊英3)

【目的】ファロー四徴症(TOF)は新生児・乳児期からチアノーゼを来す複雑心疾患のなかで最も多い心疾患であるが,四腔断面(4CV)での所見が乏しいためスクリーニング率がいまだ低い.右側大動脈弓(RAA)はTOFの約30%に合併し,かつRAA合併例は22q11.2欠失症候群などの染色体異常や心外奇形合併率が高いことが知られている.4CVで脊柱の右側に大動脈弓が存在するrt side DAOの所見はRAAの最も簡単なスクリーニング法である.今回われわれはrt side DAOの所見がどの程度TOFのスクリーニングに役立つかを後方視的に検討したので報告する.【方法】1993年 1 月~2008年12月に当院で診療したTOF 163例(胎児診断例50例,出生後診断113例)を対象にした.また同時期に胎児心エコー検査を行った3,047例の胎児のうちrt side DAOの所見を認めた91例について合併奇形を検討した.【結果】(1)TOF 163例中RAAは26例(16%)に認めた.(2)胎児心エコーでrt side DAOの所見を認めた91例の最終診断は,TOF 10例,内臓錯位10例,内臓逆位10例,血管輪 8 例,左側の横隔膜ヘルニア50例,合併奇形なしはわずか 3 例であった.【考案】従来のスクリーニングは4CVに重点が置かれ,それより上の断面のスクリーニングは十分ではなかったため,心室の形態に著しい異常所見を認めないTOFの胎児スクリーニング率は低率であった.TOFの胎児スクリーニング率向上のためには流出路のスクリーニングを徹底することは重要であるが,4CV上でTOFに関連する所見を見つけることも大切である.今回の検討で明らかになったことは,rt side DAOの所見はTOFのスクリーニングに有用であること,TOF以外の複雑心奇形,血管輪,横隔膜ヘルニアのスクリーニングにも有用であることである.【結語】rt side DAOの所見はTOFなどの流出路異常を有する複雑心疾患や心外奇形の胎児スクリーニングに役立つ所見である.

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