II-P-15
当科において胎児診断された複雑心奇形の予後と問題点
弘前大学医学部小児科1),保健学科2)
今野友貴1),嶋田 淳1),北川陽介1),大谷勝記1),高橋 徹1),伊藤悦朗1),米坂 勧2)

【緒言】2006年に胎児心エコー検査ガイドラインが発表されて以降,当院においても産科でのスクリーニングと小児科の精査体制が確立されてきたが,その有用性や問題点はいまだ明らかでない.【対象と方法】2006年~2008年に,当科へ新生児期に入院した複雑心奇形症例30例(胎児死亡例 1 例を含む)を対象とし,出生前診断例と出生後診断例について出生後の経過,予後等について比較検討した.【結果】出生前診断例は14例(A群:UVH 3,TGA 3,TOF 2,IAA 1,DORV 1,TA 1,SA + CAVV 1,ACMGA + VSD + PS 1,Ebstein 1),出生後診断例は16例(B群:TGA 4,TOF 2,TA 2,PA/VSD 1,IAA 1,CoA 1,TAPVR 1,TGA + AVSD 1,c-TGA + PS + VSD 1,HLHS 1,MA + VSD + CoA 1).当院でのスクリーニングで見落とされたTOFの 1 症例を除き,出生後診断例はすべて他施設で出生していた.当科における胎児診断の誤りはTGA + PSと診断したACMGA + VSD + PSの 1 症例であった.動脈管依存性心疾患はA群で 4 例(体循環依存 1,肺循環依存 1,TGA 2),B群で 7 例(体循環依存 2,肺循環依存 2,TGA 3).A群では出生直後よりPGE1製剤の投与を開始し順調に短絡手術あるいは根治手術を施行し得た.B群のうちIAAの 1 例はductal shockで発症し大量のPGE1製剤を必要とした.心臓関連死はA群で 3 例(Ebstein奇形:在胎29週で胎児死亡,高度房室弁逆流:日齢 7 および月齢 2 で死亡),B群で 0 例であった.【考察】Ebstein奇形を含む高度房室弁逆流症例は,胎児診断は容易であるが予後は不良であり,これらの娩出時期および外科治療の時期と方法が今後の課題と考えられた.また胎児診断した動脈管依存性心疾患では出生後速やかに治療を開始できており,胎児心エコースクリーニングの普及により施設間での精度の格差を減少させていく取り組みが必要と考えられた.

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