II-P-17
血管内ドプラ法を用いた体肺側副血管による臓器血流変化の評価
岩手医科大学附属循環器医療センター小児科1),麻酔科2),心臓血管外科3)
高橋 信1),白澤聡子1),小西 雄1),佐藤陽子1),門崎 衛2),小泉淳一3),猪飼秋夫3),小山耕太郎1)

【はじめに】グレン手術後には大動脈―肺動脈間に側副血管が生じることが多いが,それにより腹部臓器に臨床的問題が生じることは一般的には経験しない.今回,臨床的にグレン手術後の側副血管が腹部症状に影響を与えたと考えられる症例を経験した.当症例に対し,体肺側副血管へのコイル塞栓前後の臓器血流変化を血管内ドプラ法により評価を試み臨床症状との関連を検討した.【症例】左室性単心室,肺動脈閉鎖にextensive typeのHirschsprung病を合併した 1 歳男児.BTシャント手術後に増悪した難治性下痢がグレン手術後には一時軽快.しかし両側内胸動脈および気管支動脈から肺動脈に側副血管を認めた時期に一致して下痢症状が再燃し側副血管による腹部臓器血流の関連が疑われた.【方法】側副血管へのコイル塞栓前および直後に,ドプラガイドワイヤ一(FloMap®/FloWire® System)を使用し上行大動脈,腕頭動脈,下行大動脈(気管支動脈分岐より中枢側),腹腔動脈,上腸間膜動脈,右腎動脈の血流速波形を描出した.1 心周期の時間速度積分および造影により求めた血管断面積,心拍数から分時血流量を算出し,上行大動脈の分時血流量(心拍出量)と他の動脈の分時血流量の比(血流分配率)を求めた.【結果】コイル塞栓後に血流分配率が増加したのは腕頭動脈(38→43%),腹腔動脈(8→11%),上腸間膜動脈(7→10%)であった.下行大動脈および腎動脈はほとんど変化がなかった.【まとめ】内胸動脈の塞栓により脳血流が増加,気管支動脈の塞栓により腎臓以外の腹部血流が増加する傾向にあった.コイル塞栓後下痢が軽減し,残存小腸への血流増加が臨床症状の改善に関与したと考えられた.【結語】体肺側副血管の部位により,主に大動脈から盗血される臓器血流は異なると考えられ,障害臓器がある場合には問題となることがある.

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