II-P-20
新生児期以降の無脾症候群の死亡原因の検討
茨城県立こども病院小児科1),心臓血管外科2)
塩野淳子1),菊地 斉1),村上 卓1),坂有希子2),野間美緒2),五味聖吾2),阿部正一2)

【目的】無脾症候群では先天性心疾患以外に重症感染症なども死亡原因になり,突然死も知られている.新生児期以降の無脾症候群の死亡原因について検討する.【対象および方法】1992年 1 月以降,新生児期から当院で管理された無脾症候群のうち,新生児期以降も経過観察できたものは21例であった.全例,複合心奇形を合併したいわゆるFontan candidateであった.この中の死亡例について,診療録から後方視的に死亡時年齢および原因について検討した.【結果】21例中,経過観察中の死亡は 9 例であった.死亡時年齢は 1 カ月~13歳 2 カ月,中央値 1 歳 3 カ月で,1 歳未満が 4 例,1 歳代が 3 例,2 歳代が 1 例で,1 例を除いて 3 歳未満であった.手術関連死亡はなかった.病理解剖は 4 例で行われていた.最終的に 5 例で死亡原因が特定できた.死亡原因は心不全が 2 例(3 カ月,2 歳 8 カ月)で,いずれもPVOの症例であった.感染が 2 例で,脳膿瘍が 1 例(1 カ月),肺炎球菌による敗血症が 1 例(1 歳 4 カ月)であった.また,気管支狭窄に感染を合併したことによる呼吸不全が 1 例(2 カ月)あった.他の 4 例は原因を特定できず,死亡前に頻脈性不整脈が確認されたものはなかった.心不全と脳膿瘍を除いた 6 例が突然死,もしくは心肺停止に近い状態での搬送であった.この 6 例中 5 例が 2 歳未満であった.死亡例での到達手術は,BTシャントが 4 例,TAPVC修復のみが 1 例,TAPVC修復 + Glenn手術が 1 例,手術未施行例が 3 例であり,死亡例でFontan手術に到達していたものはなかった.【まとめ】無脾症候群では手術関連や心不全以外の死亡も少なくない.新生児期以降の死亡原因として感染に関連したものが多く,3 歳未満がほとんどで 2 歳までに多かった.無脾症候群では感染症の予防や合併する内臓奇形の検索など,総合的な管理が必要である.

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