II-P-24
川崎病遠隔期重症冠動脈障害のマルチスライスCTによる診断の現状と展望
日本大学医学部小児科学系小児科学分野1),黒沢病院附属ヘルスパーククリニック2)
金丸 浩1),唐澤賢祐1),市川理恵1),福原淳示1),松村昌治1),宮下理夫1),鮎澤 衛1),住友直方1),岡田知雄1),佐藤裕一2),麦島秀雄1)

【目的】川崎病重症冠動脈障害の 4 列,16列のマルチスライスCT(MSCT)による評価の有用性の検討,320列area detector CT(320列CT)の使用経験からCT撮影の展望について考察する.【対象と方法】川崎病重症冠動脈障害40例(平均年齢21.9歳,12~38歳)を対象とした.35例に冠動脈瘤を認め,28例に50%以上の有意な冠動脈狭窄を認めた.MSCTはSiemens社製(4 列)またはToshiba社製(16列)を用いた.検討 1:急性期心エコーとMSCT所見の一致性,その後の瘤の消退の有無,検討 2:MSCTによる冠動脈石灰化の性状について検討を行った.検討 3:Toshiba社製320列CTを用い胸痛を主訴とした正常者の撮影経験から,心拍コントロール,息止め,放射線被曝について検討した.【結果】検討 1: 79カ所に冠動脈瘤を認め,経過中に19カ所(24%)で瘤の消退を認めた.急性期とMSCT施行時の冠動脈瘤形成部位は一致していたが,4 例でMSCTによる新所見が存在した.3 例は左冠動脈前下行枝近位部の石灰化冠動脈瘤に隣接する左冠動脈本幹の壁不整で,1 例は左冠動脈回旋枝中間部の小動脈瘤であった.検討 2:冠動脈石灰化を40例中の29例(72.5%)に認めた.全周性石灰化を41カ所(全石灰化箇所の75.9%)に,辺在性石灰化を13カ所(全石灰化箇所の24.1%)に認めた.検討 3:8 歳の男児例.メトプロロールを使用したが,心拍数の低下が不十分(75/分以上)であり 2 心拍によるヘリカル撮影をし,5 秒間の息止めを行い良好な冠動脈画像が得られた.放射線被曝は 9mSvであった.【考察】川崎病遠隔期冠動脈障害の画像診断は,急性期の瘤形成部位と遠隔期のMSCTによる冠動脈壁所見の統合診断が重要である.MSCTは石灰化冠動脈瘤の内腔評価に優れ,インターベンション前後の判定に有用であった.320列CTでは十分な拡張相を得るための心拍コントロールが放射線被曝の軽減に重要である.良好な画像を得るためには,息止めと心電同期が重要で小学生以上が適応と考える.

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