II-P-25
川崎病遠隔期・学童期に適した負荷心筋血流SPECTに関する検討
日本大学医学部小児科学系小児科学分野
中村隆広,唐澤賢祐,金丸 浩,福原淳示,市川理恵,松村昌治,阿部 修,鮎澤 衛,住友直方,岡田知雄,麦島秀雄

【目的】川崎病遠隔期・学童期に適した負荷心筋血流SPECTとしては,放射線被曝が少なく,アーチファクトの少ない鮮明な画像で,時間的制約の少ないものが望ましい.今回,テクネシウム血流製剤による安静先行型 1 日法を用いた検討を行った.【対象および方法】対象は川崎病遠隔期の経過観察および心臓検診で精査を必要とした 9 例で,検査時年齢は12~27歳,中央値17.0歳である.方法は当日絶食の安静時にTc-99m tetrofosminを200~300MBq(負荷時投与量の1/3以下になるように調整)投与し,牛乳または炭酸飲料を摂取し15分後に安静時の撮像(1 方向50秒)を行った.その後,50wattから 1 分ごとに25wattずつ漸増するrapid protocolによるエルゴメーター負荷を行い,Tc-99m tetrofosminを900~1,000MBq投与し,脂肪食および炭酸飲料を摂取し負荷時の撮像(1 方向20秒)を行った(Tc群).撮像時体位はMonzen body position(背泳ぎスタイル:左手を挙上した弯曲姿勢)を指示した.対照として,以前に行った安静時タリウム・負荷時テクネシウム心筋血流SPECTを行った51例(Tl-Tc群)と比較検討した.【結果】肝集積の近接によるアーチファクトはTc群 1 例(11.1%),Tl-Tc群 7 例(13.7%)であり有意差はなかったが,腸管集積のアーチファクトは胃の容積拡大によって軽減できた.最高心拍数はTc群166 ± 11bpm,Tl-Tc群165 ± 14bpmで両群間の差はなかったが,運動負荷時間はTc群8.3 ± 0.6分に対しTl-Tc群11.1 ± 2.4分で有意に短縮した(p < 0.01).安静時と負荷時の核種投与間隔はTc群79.1 ± 22.9分,Tl-Tc群90.7 ± 37.6分であり,検査時間が短縮する傾向を認めた(p = 0.37).【考察】今回試みたテクネシウム血流製剤による安静先行型 1 日法は,被曝量およびアーチファクトを軽減し負荷強度を落とさずに検査時間を短縮することが可能であり,川崎病遠隔期・学童期における心筋虚血の画像診断法として有用であると考える.

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