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内臓錯位症候群に伴う気管病変の術前評価に対するMDCTの有用性
富山大学医学部小児科1),第一外科2)
渡辺一洋1),伊吹圭二郎1),斎藤和由1),廣野恵一1),市田蕗子1),宮脇利男1),大高慎吾2),北原淳一郎2),松久弘典2),芳村直樹2)

【背景】先天性心疾患に気管狭窄などの気道病変合併や大血管による気管の圧迫により呼吸器症状を呈することは時に経験される.これまで気管の評価には気管支鏡などが用いられていたが侵襲が大きくルーチンには行いにくい検査である.また断層CTなどでも形態の評価は可能であるが大血管との位置関係の把握は容易ではない.われわれは2005年から内臓錯位の症例には術前に肺静脈の還流の評価と併せて気道病変の評価に積極的にMDCTを用いている.【方法と対象】2005~2008年の間に当院に入院した内臓錯位の症例 9 例を対象とした.いずれも日齢 0~3 の間にMDCTが施行された.MDCTは心電非同期下で非イオン性造影剤 2ml/kgを15秒で注入しdelay15秒で撮影された.得られた画像は3D構築され肺静脈還流異常や大血管の位置関係など心形態の評価と併せて気道の形態評価がなされた.【結果】 9 例のうち 3 例に気道の形態異常が認められた.いずれの症例も臨床的になんらかの呼吸器症状を呈し内科的治療を必要とした.2 例は両側気管気管支,1 例は右気管気管支であった.両側気管気管支の 1 症例は術前からX線上右無気肺と左肺過膨脹を呈し人工呼吸管理を必要とし,もう 1 例は哺乳後の無呼吸を繰り返した.右気管気管支の症例ではBT shunt施行後,抜管困難となり長期の人工呼吸管理を余儀なくされた.【結論】内臓錯位症候群に気道の形態異常を認めることはまれではない.合併する心疾患も複雑であり呼吸状態の悪化が循環動態に与える影響は少なくない.そのため術前から気管の形態評価は重要である.MDCTの導入により比較的低侵襲で気道の正確な評価が可能であった.

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