II-P-28
無脾症候群における房室弁形態の分類—二次元および三次元エコーを用いた評価—
静岡県立こども病院循環器科1),心臓血管外科2)
新居正基1),北村則子1),中田雅之1),増本健一1),早田 航1),佐藤慶介1),金 成海1),満下紀恵1),田中靖彦1),坂本喜三郎2),小野安生1)

【背景】無脾症候群において房室弁機能は予後を規定する大きな因子の一つである.しかし,本疾患は心室形態,房室弁形態,弁下組織形態等が非常に多様性に富むことから系統だった分類,特に弁機能との関連から分類されたものがいまだ存在しない.【目的】無脾症候群の弁形態について,弁機能(逆流程度)と関連づけて分類を行う.【方法】対象は当院にて3Dエコーを施行した13例(男 9 女 4:年齢 1 カ月~4 歳(中央値 1 カ月).2Dおよび3Dエコーを用いて,心室形態(左右心室のバランスおよび主心室),乳頭筋形態(数・位置),機能的弁形態,腱索形態,また,主交連に沿ったcoaptation位置について検討を行う.また,弁逆流の程度および逆流位置を評価し,弁形態との関連について評価を行う.【成績】心室形態はunbalanced AVSDで右室を主心室とするものが 9 例,左室が主心室のものが 1 例,balanced AVSDが 2 例.房室弁輪は正常僧帽弁輪径の180~200%(中央値181%)で,機能的弁形態は 2~4 弁(中央値 4)であった.房室弁逆流は 1~3 度(中央値 2)で,逆流ポイントは右室側弁中央が 9 例とほとんどを占めた.逆流の程度が 2 度以上(5 例)であったものは,弁にcleftもしくは強い異形性があった場合(2 例)を除いては,心室中隔からの短腱索によるtetheringが強く関連していた(3 例).なお,tetheringの強い部位ではcoaptationが心尖部方向に落ち込んでいた.【結論】無脾症候群の弁形態は多様であるが,弁機能・逆流機序については一定の傾向が認められた.Tetheringが強い場合にはcoaptationが心尖部方向に落ち込んでおり,心室容量負荷により同部位は容易に重度の逆流を生じると推定された.弁下組織を含めて弁構造を評価することが,長期的な視点(多段階手術における心室容量負荷の変化を考慮)に立った弁形成の基本になると考えられた.

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