II-P-31
3D心エコーによる三尖弁腱索・乳頭筋の検討
東京大学医学部小児科
香取竜生,豊田彰史,小野 博,中村嘉宏

【背景】修正大血管転位・左心低形成症候群など右心室を体循環に用いる疾患においては三尖弁逆流の存在が重要な問題となる.弁輪が拡大・変形する以外にも,本来三日月型である右心室が円状になることにより腱索・乳頭筋の位置・方向が変位することも逆流の発生に関与するとされ,弁輪縫縮等の形成術のみでは良好な結果が得られていない.しかし実際に拍動している心臓での腱索・乳頭筋を評価することは困難であった.今回われわれは3D心エコーを用い,拍動中の三尖弁腱索・乳頭筋の位置・運動の評価を試みたのでここに報告する.【方法】Philips社製iE33およびX7-2プローブを使用し複数の方向から右心房・三尖弁・右室の3D心エコーを行った.【対象】左心低形成症候群 4 症例(両側肺動脈絞扼術後 1 例,ノルウッド術 + 右ブラロック・タウシッヒシャント術後 1 例,両方向性グレン術後 1 例,フォンタン術後 1 例).体重3.3~7.5kg.三尖弁逆流I~III度.【結果】全例において良好な3D画像を構築することができた.心窩部からアプローチした場合が,エコービームが腱索・乳頭筋に垂直な方向から入射するため最も良好な画像を得られた.心尖部からのアプローチでは腱索の描写がやや難しく,胸骨傍からでは右室全体を描出することが困難であった.保存した4Dデータから各時相の弁輪,弁尖,腱索,乳頭筋の座標を求めることにより弁および弁下組織の位置,方向,運動を評価することが可能であった.【考察】3D心エコーを用いることで拍動中の三尖弁の弁下組織の運動の評価が可能であった.今後3D心エコーによる評価を重ねることにより弁下組織が三尖弁逆流に及ぼす影響のより詳細な検討が可能となり,弁下組織も含めた有効な形成方法のデザインに寄与できるものと思われた.

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