II-P-34
心室中隔欠損における術前心エコー検査の精度
静岡県立こども病院循環器科1),心臓血管外科2)
増本健一1),佐藤慶介1),北村則子1),早田 航1),中田雅之1),金 成海1),満下紀恵1),新居正基1),田中靖彦1),小野安生1),坂本喜三郎2)

【背景】心室中隔欠損(VSD)閉鎖術において,アプローチの決定や運針周辺構造への配慮のため,正確な部位診断は最も重要である.今回われわれは,術前心エコー検査の精度を評価するため,経胸壁エコー検査(TTE)および経食道エコー検査(TEE)と術中所見を比較し検討を行った.【対象と方法】対象は2004年11月~2008年12月に当院においてVSDを主疾患とし根治術を受けた172例中,術前TTE,術中TEEをともに施行された139例.欠損孔の部位診断にはSoto分類に基づき,術中所見を確定診断とした.診療録,データベースからTTE,TEE,術中所見について後方視的に検討した.【結果】TTE・TEEによる診断エラーは20例(14.4%),そのうちTEE後にエラーを認めたのは10例(7.2%)であった.内訳は,筋性部流出路VSDと両半月弁下VSDまたは傍膜様部VSD流出路伸展のエラーが最も多くおのおの 6 例(計60%).その他,両半月弁下VSDと傍膜様部VSD流出路伸展およびそれらの混合型(円錐中隔全欠損)関連のエラーを 6 例(30%)に認めた.大動脈弁逸脱の有無に関するエラーを11例(55%)に認めた.筋性部流入路VSDと傍膜様部VSD流出路伸展の鑑別が極めて困難であった 2 例では,術中所見でもボーダーラインであり,閉鎖時に刺激伝導系が上・下縁いずれでも対応できるよう配慮を要した.診断エラーに伴い 2 例でアプローチ法の変更(主肺動脈切開から右房切開)を要したが,術後合併症例は認めなかった.【考察】今回の検討の結果,TEE施行により診断の精度は上昇したが,課題も残っている.また,流出路中隔関連の診断エラーが多く,肺動脈弁下のわずかな筋肉成分・線維性成分介在の有無や膜様中隔境界を含むか含まないかの解釈の違いが主な要因と考えられた.エコー検査のピットフォールを理解し診断精度の向上に努める必要がある.

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