II-P-36
小児慢性腎不全患者における腎移植前後の左室拡張能についての検討
東京女子医科大学循環器小児科
富松宏文,池田亜希,山村英司,稲井 慶,森 善樹,篠原徳子,竹内大二,清水美妃子,中西敏雄

【背景】小児腎不全患者において心機能が低下することはよく知られている.しかし,検査時の負荷が異なることが多く,心機能評価が適切に行えていないことが推測される.さらに,心機能低下の原因は単純ではなく,またその可逆性についての見解は一定ではない.【目的】小児の腎移植後の心機能の変化を検討すること.【対象】2005~2008年に腎移植が行われその前後で心エコー検査が施行された16例.男:9 名.女:7 名.移植時年齢 2~20(中央値13)歳.移植後期間20~207(中央値28)日.【方法】腎移植前後の心エコー検査から,左室拡張末期径(LVDd),左室拡張末期後壁厚,左室流入血流波形(E波,A波),心室中隔側での僧帽弁輪後退速度Em,左室短軸平均短縮率(LVSF),左室心筋重量係数(LV mass I), E/A,E/em,TEIなどを求めた.E/Em 8 以上を拡張障害ありとした.【結果】移植前の検査では拡張障害群(DDF群)10名,拡張障害なし群(NDDF群)は 6 名であり,この 2 群で移植前後の変化を検討すると,移植時平均年齢11 vs 12歳(NS)(DDF vs NDDF以下同様),移植後平均日数55 vs 44日(NS).2 群ともに移植前後でLVDd,LVSF,E/A, LVTEI,LV mass Iは有意な変化を認めなかった.DDF群で,移植後E/Emは低下傾向を示し,かつEmは8.1~9.6cm/secへ有意に増加した(p = 0.004).【結論】慢性腎不全では左室拡張障害を認めることがある.腎移植後の左室拡張能は,移植前に拡張能が低下していない例では大きな変化を認めないが,移植前に拡張能が低下している例では,有意に改善する.腎不全による左室拡張障害は可逆性である可能性が示唆された.

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