II-P-38
フォンタン術後の体静脈径および血流について—超音波検査からの検討—
国立循環器病センター生理機能検査部1),小児循環器診療部2),心臓血管外科3)
幸山佳津美1),大内秀雄2),橋本修治1),田中教雄1),山田 修2),八木原俊克3)

【目的】フォンタン(total cavopulmonary connection:TCPC)術後患者の体静脈径,血流の検討.【対象】TCPC術が施行された左室型患者18例(L群,6 歳~33歳,男:女 = 11:7),非左室型患者24例(non-L群,2~31歳,男:女 = 19:5)(中央値:ともに19歳)と健常者159例(N群,2 カ月~23歳,平均:8 歳,男:女 = 82:77)を対照とした.【方法】L群およびnon-L群の体静脈径を測定し,N群から求めた回帰式により%表示し,上大静脈(SVC)およびIVC血流(m/sec:肝静脈血流で代用)を自然呼吸下,パルスドプラ法にて最高流速を求めた.またIVCの短径/長径比(S/L比)も算出した.フォンタンの 2 群ではこれらのエコー指標と心臓カテーテル検査から得られた心内圧と比較した.【結果】(1)L群,non-L群のIVC短径%とSVC径%はN群と差は認めなかったが,IVC長径%はL群のみN群に比し有意に低値であった(94.6 ± 25.4% vs 101.1 ± 19.5%,p < 0.01).(2)IVCのS/L比はL群,non-L群ともにN群に比し有意に高値を示した(0.79 ± 0.15,0.77 ± 0.14 vs 0.68 ± 0.15,ともにp < 0.01).(3)L群,non-L群のIVCおよびSVCの最高血流速度はN群に比し有意に遅かった (0.22 ± 0.10,0.28 ± 0.08 vs 0.85 ± 0.29,0.31 ± 0.09,0.33 ± 0.11 vs 0.7 ± 0.17,すべてp < 0.01).(4)L群ではIVC短,長径%ともに心房内圧と正相関し(おのおの,r = 0.74,p < 0.01およびr = 0.79,p < 0.001),SVC径%は肺動脈圧と正相関した(r = 0.57,p < 0.05).しかし,体静脈最高血流速度は心内圧と有意な関係は認めなかった.non-L群ではS/L比のみ心房圧と負相関を認めた(r = -0.51,p < 0.05).【まとめ】TCPC術後の体静脈形態と血流動態は対照と異なり,体心室形態による差があるものの,心内圧と関連する.超音波検査での体静脈形態と血流動態評価はTCPC術後の血行動態把握に有用である.

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