II-P-39
無症候Fontan患者におけるBNPと収縮性,拡張能,負荷状態との関係
埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科
増谷 聡,先崎秀明,玉井明子,関  満,葭葉茂樹,石戸博隆,竹田津未生,小林俊樹

【背景】Fontan循環は,正常二心室循環とは異なり,基本的に心室前負荷のかかりにくい状態であり,循環不全に陥る状況は必ずしも心室の負荷を意味せず,Fontan循環におけるBNPの値の意味はいまだ十分理解されたものではない.そこで今回われわれは,心臓カテーテル検査によって得られた詳細な心機能,前負荷,後負荷のデータとBNPとの関係を調べ,Fontan循環におけるBNPの病態生理学的意義を検討した.【方法】心臓カテーテル検査を施行したFontan術後患者32人において,通常のカテーテル血行動態検査に加え,下大静脈閉塞中の心室圧断面積関係検査から得られた心収縮性,拡張能,負荷条件,全体的血行動態に関する種々の指標と血中BNPとの関係を検討した.患者のNYHA分類はIが21人,IIが 8 人,IIIが 3 人.【結果】BNP値は,4~60 pg/ml(平均15.2 ± 13.1,中央値11.2pg/ml)で,NYHA class間で有意な違いはなかった.単変量解析では前負荷・後負荷・心収縮性に関連を認めず,拡張末期圧(EDP),心室relaxation time constantとは正の相関が考えられたが統計学的有意差は認めなかった.8 例のみの計測のため統計学的に有意差は認めないものの,拡張末期Wall StressはR = 0.51で最も強い関連が示唆された.さらに心室動脈整合Ees/Eaとも関連が示唆された.【考察】今回の検討対象におけるBNPの上昇は軽度であった.Fontan循環は前負荷予備能に乏しい特性を有するため,failed Fontanにおいても心筋ストレスが上昇しにくく,BNPの分泌につながらない可能性が想定された.Fontan循環における症状の改善や悪化の方向と,BNPの変化の方向との関連が 2 心室循環と同様かどうかについても,今後の検討が必要である.

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